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音の食卓〈ハンバーグ〉

もしあなたが好きな食べ物を問われたとき、「ハンバーグ」と答えたとすると、ずいぶんお子さまっぽい印象を持たれるだろうか。

ハンバーグには残念ながらそういう印象がついてまわる。
けど、例えば焼肉が原始的なごちそうだとすれば、ハンバーグこそは人類の経験値と技術を集めた上で洗練を重ねたごちそうのひとつではないだろうかと思うのです。
大きさ、厚さ、焼き方はもちろん、挽き肉の挽き方、牛豚鶏の割合、玉ねぎや野菜の量、香辛料の種類と割合、ソースへのこだわり、、、
職人によって、お店によって、地域によって、様々な種類のこだわりがあちこちにあり、それぞれに洗練されている。
そしてこだわり抜かれているにも関わらず、いずれも万人受けする。
つまりはポップなのだ。



ポップであることは悪いことではない。
けど、熟練した技術と万人受けするポップさを追及しながらも、そのポップさが仇なのか評論家筋からは「初心者向け」だの「子ども騙し」だのとロック史の中で正当な評価を受けていないアーティストがたくさんいる。
でも、中学生~高校生の頃、洋楽というものの入り口になったのは、そういう「初心者向け」と揶揄されていたような人たちで、中でも一番大好きだったのはブライアン・アダムスだった。


Reckless / Bryan Adams

今改めて聴いてみると、楽曲のクオリティの高さに驚く。
伸びやかで美しいメロディー、ツボをついたギターの荒っぽさ、アドレナリン分泌を促進するリズム、熱いシャウトと泣かせるバラード。
青春期っぽいやんちゃさと、完成され尽くしたようなポップさの違和感のない同居。
まさにハンバーグ。
ふわっふわで、旨味があって、肉汁滴り落ちるジューシーさ。
なんていうんだろうな、このクオリティーの高さは、決して子ども騙しなんかではなかった。
ブライアン・アダムスの音楽が、単なる感情の垂れ流しのような自称ロックとはまた別の種類の完璧な輝きを持っていることに気付いたのは、ずいぶん歳を重ねてからのことだったけれど。



結局、万人に受け入れれらるクオリティーを追及する音楽職人なんだろうね。
そういう職人としてのこだわりと万人受けは、バランスが少しでも狂うと万人受けだけを狙った金儲け用商品にもなるし、こだわりが全面に出過ぎると難解なものにもなりかねない。
ある時期のブライアン・アダムスは、そのバランスが完璧だった。
おいしいハンバーグを食べたときのような、子どもも大人もついニコニコして納得するような満足感があった。









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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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