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音の食卓〈ハッシュドポテト〉


Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit / Courtney Barnette

このザクザクと軽快なビート、ラフにギターをかき鳴らしながら、放り投げるように歌われる呟きのようなメロディー。
重くもなく、でも軽やかでもなく、内省的な感じもありつつあっけらかんとしている。
反抗的に突っ張るのも馬鹿馬鹿しいけど、おとなしくいい子ちゃんでいる気もない。
かわいらしい女の子ぶった笑顔なんて作りたくもないけど、一人で暗く落ち込んでいるのもやってらんない。
そんな感じがすごくいい。



コートニー・バーネットさんは、オーストラリア出身のシンガーソングライターで、2015年にこのファーストアルバム“Sometime I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit”でデビュー、今のところ2枚のアルバムを発表している。



このザクザクとした軽快さ、ラフで粗っぽいのに攻撃的ではない感じっていうのは食べ物に例えるとなんだろう。

主食ではない。
メインのおかずでもない。
そう、もっとジャンクでスナックっぽいやつ。
でも、お菓子じゃない。
豚まん?そこまでふくよかではない。
でも焼き鳥ほどに泥臭くもない。
チキンナゲット。
うん、近い。
でもそこまで肉っぽさはない。
もっとがさつで、イモっぽい。
あ、そうだ、イモだ。
ハッシュドポテトだ。



ハッシュドポテトという食べ物のことを、僕は高校を卒業するまで知らなかった。
わが町にはマクドナルドというものが存在しなかったからだ。
大学生になって京都に住むようになって初めて食べた。ちなみにコールスローサラダもそうだった。
なんだろう、このモサモサしたどっちつかずの食べ物は?おやつなの?食事なの?アメリカ人はこんなものをおいしいと思っているんだろうか?というのが最初の感想。
わざわざイモを砕いてからまた成型するなんて変なの、なんて思っていた。
今もその感想は大きくは変わらないんだけど、時々すごく食べたくなる。
なんとも投げやりでどーでもいいような感じが逆にワン&オンリーな感じがするのですよね。
フライドポテトともポテトチップスともふかし芋とも違う、ハッシュドポテトでないと出せない食感と味わい。
最初から最後まですき間であり続けながら飄々と存在しているところに、何とも言えないいとおしさすら感じたりしてしまうのだ。






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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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