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ビンとテープ、他

絵画で表現された世界を言葉で語ることは、とても難しい。
言葉はイメージを限定してしまうからだ。
下手をすれば、とても奥行きと広がりがあるその絵の世界観を、ある固定の解釈に誘導し、狭め、矮小化してしまうことにもなり兼ねない。
ただ、上手く言葉を紡ぐことができれば、抽象的な世界観に輪郭を作ることができるかもしれない。

そんな思いをこめて、あすてかさんの絵に、少し言葉を添えてみることにする。




「ビンとテープ」 drown by Asuka

透明なビンの中に
閉じ込められた音楽。

赤いリボンは、
これから結ばれようとしているのか。
今、ほどかれようとしているのか。
それとも、ほどきかけてためらわれたのだろうか。
行きつ戻りつを繰り返しながら、
少しためらいながら、
それでもひとつのアクションを起こそうとする意志がこの絵にはある。
いや、意志というほど強くはない、
もう少しふんわりした“想い”のような。

このリボンがほどかれたとき、
聞こえてくる音楽は、
どんな音楽だろう。
明るくて透明感があって、
淋しさやためらいがありながらも、
しなやかで本当の意味での強さが
感じられる音楽だといいな。




「会話」 Drown by Asuka

蝋燭とグラスたちの“会話”。
近づきたい距離と、近づけない距離。
ゆらゆらと揺れる炎への、
憧れと恐怖。
不安と希望が託された青。
ときめきと揺らぎ。

この絵を見ていると、
揺らぐことは普通のことと思えてくる。
むしろ、素敵なことだと思えてくる。




「貝殻」 Drown by Asuka

貝殻たちのひそひそ話。
とてもファンタジックだけど、
少し見方を変えて見ると、
なにやらモゾモゾしたりイガイガしたりしたものが心の底で沈殿しながら、
声にならない言葉を呟いているようにも見える。
あるいは、耳の奥にある蝸牛や、
脳の底にある海馬や下垂体、
そういう脳内の構造物のようにも
見えてくる。

そんな見え方がしてしまうのが
彼女の作品の奥行きだと思う。
どこかに透きとおった痛みのようなものがあって、
だけど彼女の絵は「こんなに痛いのよ」とは言わない。
むしろ「だいじょうぶだよ」と
明るく笑っている。
明るく笑った次の瞬間に、
ふらりと倒れこんだりしてしまう危なっかしさもあったり、
意外とタフだったり。

そういえば、彼女のテーマは
「静の中の動」だという。

美しさと生々しさ、強さと脆さ、
賑やかさと静けさ、
そんな相反するものが
違和感なく同居する不思議な魅力が
彼女の絵にはある。



今回はこれくらいにしておこう。

続きは、いつかの個展のために。



もうずいぶんと長いおつきあいになるけれど、ブログを始める前の彼女のことは正直よく知らない。
知らないけれど、彼女の絵からは、悲しい経験や辛い思いを胸の奥に大切に抱えながら、明るさを失わずにいようとする願いのようなものを感じるのです。

ちなみに、土曜日にあった彼女は、この絵くらいに元気でたくましく、それがとても微笑ましかった。




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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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