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音の食卓〈牡蠣〉

牡蠣という食べ物は、なんともなまめかしい。
セクシーでエロチックな感じがする。
ぷりっとふくよかな身、こってりとミルキーなコクと磯の香り。
ジューシーでみずみずしいんだけど、同時にどこか生臭さがあって、生き物をまるごといただいている感じがすごくする。
しかも内臓だけをすすっているような生々しさというか。
もちろん嫌いではないんだけど、食べるときには少し勇気がいる。

学生の頃に、友人の下宿で牡蠣鍋をたらふく食べて、翌日ひどくお腹を壊したというトラウマもあるんだけど、それ以上に、あの「生き物をそのまま食べる」生々しさがどことなく躊躇させるのだと思う。
ちゃんと腹を据えて向き合って食べなきゃいけない気持ちになる。



牡蠣のようななまめかしさを持った音楽で思いあたったのは、プリンスだ。


Parade / Prince and The Revolution

なにしろ常識とかモラルとかを超越したところで歌う人だ。
歌詞にもセクシャルな表現がてんこ盛りなんだろうけど、それ以上にリズムと声がエロい。
ジューシーでミルキー、そして生臭い。
人工的でミニマルなビートと喘ぎ声のようなウィスパー&シャウトのせめぎあいは、まるでぬめぬめと舌を這わされるようで、その執拗な責めに羞恥心に似た不快感と不思議な快感の間で揺れ、いつの間にかプリンス・ワールドに引き摺りこまれてしまう。受け入れさせられてしまう。
あぁ、明日もしお腹を壊してしまったとしても、この快感には代えがたい。
そういうところが、すごく牡蠣っぽい。



そういえば牡蠣というのは、実は天然ではあのような姿では存在しないらしいですね。
そもそもはもっと小さな生き物で、岩場にフジツボみたいにへばりついて生きるらしい。
稚魚の頃は遊泳するのだけど、へばりつく場所を定めるとそこからは移動する必要がないので筋肉がなくなり、ああいう姿になるのだそうだ。
そういう習性を誰が発見したのか、海中にホタテの貝殻をぶら下げておくと稚魚がへばりついて勝手に大きくなる。
岩場では栄養摂取に限界がるのだろうけど、栄養豊富な海中だとあそこまで肥大化するらしい。
まるで快楽的な部分だけを局所的に膨らませるように。

海のミルクと呼ばれるほどの豊富な栄養と、体調が悪いときに聴くとお腹をこわしそうなくらいの毒を両方持っている牡蠣。
そういうところもなんとなくプリンスぽいんじゃないかと思うのです。








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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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