金曜日の夜の最終電車はいつも酔っぱらいでいっぱいになる。 酒臭さが車内に充満するのは我慢できるが、酔っぱらいの大声には時々我慢できない。 僕が立った吊り革の前には、50代位の頭の薄くなった小太りのオッサンと、僕と同世代くらいであろう気の弱そうな男が座っていた。頭の薄くなったオッサンは、どうやら今は会社では不遇な立場に置かれているらしく、自分の属する会社を運営している連中の悪口、ぼやきを、こんこんと気の弱そうな男に語っている。気の弱そうな男は今は管理職にあるらしく、男の手前勝手な上層部批判をそうだそうだと同調することも出来ずかといって頭の薄くなったオッサンの意見に対して言い返すでもなくあいまいにうなずくばかり。 まぁ、それはそれでよくある光景だ。 やかましい酔っぱらいめ、そんな愚痴は全部飲み屋で吐き出してこいよ、なんて思いながら、しかし何しろ目の前で大きな声なのでヘッドフォンをつけていても否応なしに耳に入ってくる。 やがて話題は、近頃の若者のことになった。 よくある「近頃の若い奴はなっとらん。」の類だ。 「最近の若い奴はなぁぁぁ、ほんまにあいさつすらろくにでけへん。俺がなぁ、よかれと思って注意をしてもすぐにへそを曲げるし、自分勝手な行動を取るし、人の迷惑というものをなぁ、そもそも教育されてきてないんやろおなぁ、人の迷惑、人への配慮っちゅーもんがあまりにも欠けとおる。あれはそういう教育をされてきてないんやろおなぁ。。。。」 その言葉に僕はついカチンときた。 人の迷惑?今、この目の前で、くたびれた金曜日の最終電車をさらに不愉快にさせているアンタが「人の迷惑」を語るかぁぁぁ??? その瞬間、僕はオッサンを睨みつけて、こう言ってしまった。 「なぁ、オッサン、それ、でっかい声で迷惑かけとる奴が言うセリフとちゃうんちゃうか?人の迷惑考えてないのは誰やねん。」 オッサンは黙った。 「大きな声でしたか、えらいすんまへん。」 やり込めるつもりはなかった。ちょっとかわいそうなことをした、とも思った。 僕だって疲れていたのだ。 本当は、あんなセリフを吐き出さずに、セックスピストルズでも大音量で聴くべきだったのだ。 Never Mind the Bollocks Here’s the Sex Pistols/The Sex Pistols 大音量の洪水の中でまるで駄々っ子のように、ありとあらゆるものへの罵詈雑言をわめきちらすジョニー・ロットン。
このレコードは、痛快だ。
このところ次々といろいろ忙しくて、それはそれで決して嫌な感じではなくむしろスリリングでワクワクして、求められるものに答えていける快感のようなものもあって楽しかったのだけれど、少し無理もしていたのだろう。
現場から今の部署に移動して半年。以前に比べ、冷静に大人に振舞うことにも少しは慣れて、自分の体にしみこんできたと思っていたけれど、どうやら押さえ込んだ無理は知らず知らずに蓄積して、こういうところでふらっと出てしまうものらしい。
まぁいいだろう。
ピストルズのレコードを未だに痛快に感じられる自分というのもそれはそれで悪くない。
まだまだそこまで丸くはなってない、ってことだ。
僕のパンク・スピリットは、まだまだ健在のようだ。
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