FC2ブログ

Entries

音の食卓〈すき焼き〉

すき焼きはあまり好きじゃなかった。
そう言うと、なんと贅沢な!と言われるだろうか。

我々の父母の世代というのは、子どもの頃はまだ戦中戦後で食糧事情がよろしくなかったせいか、「贅沢なご馳走」というものへの憧れや「家族の団らんこそが幸せの象徴」という思い込みが強い世代だ。
僕の父親もそういう男で、普段はそんなに贅沢はしないどちらかといえば倹約家のほうだったけれど、誕生日だとかお祝い事だとかいう節目には外食で高級なものを振る舞いたがった。
それなりの外出着を着せられて、天王寺や難波や心斎橋まで出かけるのだ。
「かに道楽」とか「天壇」とかそういうところ。正直店の場所や名前まで覚えていないのだけど。
中でも多かったのはすき焼きだった。
子どもたちは喜んでいる、と思っていたのだと思う。いや、兄や弟は喜んでいたのかも知れない。
僕はどうもね、好きじゃなかった。
あの甘いタレが好みではなかった。
お肉の脂身部分とか、麩や糸こんにゃくも。
唐揚げとかハンバーグとかコーンクリームシチューの方がご馳走だったな。

そういう訳で、今でもそんなに積極的に好きではない。
そりゃ、サシの入ったA5等級の松阪牛や神戸牛クラスだとおいしくないわけはないのだけれど、そんな高級品がそうそう手に入るわけではない。
だからといって、商売柄おいしいものは知っているだけに、その辺のアメリカ牛やホルスタインの経産牛あたりですき焼きという気分にはならないのだ。



ご馳走や日常の食卓にのぼるメニューは、音楽に例えるとどんな感じなんだろう?ということを書いてみよう、というのが今回のテーマ。

「すき焼き」でひらめいたイメージはこのレコードです。


Ray Sings,Basie Swings / Ray Charles and Count Basie Orchestra

レイ・チャールズとカウント・ベイシー楽団による共演。
正確には70年代レイのライヴに後付けでベイシー楽団の演奏をのっけたものなのでちゃんとした共演ではないけれど、そんなこと言われなきゃわからない。



そりゃあもう、すごくスゥイングする熱を帯びた演奏だ。
そしてソウルフルで滋養たっぷりの歌だ。
最高に美味です。
超ごちそう級です。
すき焼きにするなら、これくらい極上の素材で調理したい。

ただ、ちょっとだけね、脂っこくて全部聴くと胃もたれする。
日常づかいにはちょっと贅沢。
ほんとにゴージャスな気分に酔いしれたいときに、ちょっとだけ。
そーゆー感じが「すき焼き」だと思うわけです。




スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/1632-838f4f97

トラックバック

コメント

[C3404]

名盤さん、遅ればせながら、明けましておめでとうございます。

こういうご時世でなければすき焼きパーティーのひとつでも、と思うのですが、また緊急事態宣言ですね。
飲食店ばかりがわるものにされ、正直厳しい状況だろうとは思いますが、、、
そのうちすき焼きパーティーやりましょう♪
  • 2021-01-12 21:33
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3403]

すき焼き大好きです!
でももう何年も食べた記憶がない。。
年齢と共に、サシが多いのは苦手になってきましたが、脂身のない和牛のすき焼き食べたいです。
今年は食べれるといいな~

では、今年もよろしくです!!

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

02 | 2021/03 | 04
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

Gallery

Monthly Archives