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音のパレット〈琥珀色〉

琥珀とは、木の樹液が長い年月をかけて固まり、化石化したもの。
樹液が琥珀化するには、2000万年~6000万年という途方もない時間がかかるらしい。
100年生きたとしても、それを20万回分。想像するだけでクラクラしそうだ。

色彩としては、くすんだ赤みの黄色。
オレンジでもなく茶色でもなくゴールドでもなく、そのいずれとも親和性の高い色。
ウイスキーや蜂蜜の色が近いのかな。

そんな琥珀色の音楽、というイメージで思い出すのは、ハリー・ニルソンやランディ・ニューマン。
ならば、ニルソンが歌ったランディー・ニューマンを歌った名曲集なんてどうだろうか。


Nilsson sings Newman / Nilsson

樹液が化石化するくらいの長い年月をかけて熟成されたような深みのある音楽が、ウイスキーで焼けたようなハスキーな声で歌われる。
苦く、悲しみが堆積したような声なのに、どこか蜂蜜のように甘くまろやかで。
ゴールドに憧れながらくすんでいく茶色、オレンジ色の火花をあげながら朽ちていく灰色、枯れて土に還っていくオレンジ色の落ち葉、、、そういうイメージが次々と湧いてくる。
そんな、退廃的で独特の詩情に溢れたところも、樹液やウイスキーや蜂蜜といったイメージとどこか似通っているような気がするのだ。



 陽が昇ると牛乳屋さん
 そして新聞がドアにつっこまれる
 地下鉄がゴトゴト走り出し
 そして僕はあなたを想う
 灰色の夜明け
 また次の淋しい一日が始まる 

 あなたがいない暮らしは
 なんだかなぁ

 みんな何かを持っていて
 で、もっともっと欲しがろうとする
 その何かのために毎朝起きるんだろ
 でも、僕はどうでもいい
 何も起こらない
 何も変わらない

 あなたがいない暮らしは
 なんだかなぁ
(Living without you)

こんなふうに、日々の倦怠にまみれたまま何十年が経ったとき、この気持ちは琥珀色に変わるのだろうか。
そんなことを思いながら、ぼんやりと音楽に身を委ねていた。
秋は深まり、枯れ葉とウイスキーが似合うようになった。






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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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