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音のパレット〈アイヴォリー〉

アイヴォリー。
少し黄色味や灰色味を帯びた白系統の色。
象牙なんて舶来品だから象牙色という言葉は直訳だろうけど。
この色に感じるのは、尊厳のようなもの。
人としての誇りやプライドを高く持つという以上に、歴史や文化に敬意を持って接した上で意思を強く持って生きる、みたいなイメージがある。

そんな風に思ったのは、このレコードの印象の影響かもしれない。


Extention Of A Man / Donny Hathaway

交響曲のような荘厳なオープニングから、解放を希求する“Someday We All Be Free”への美しい流れ。
天へ届くように、どこまでも伸びやかなダニー・ハサウェイの声は、自由を求めて高く掲げた腕のように、何かを求めるエネルギーに満ちている。



アイヴォリーは、真っ白に比べてくすんでいる。
そのくすみは、人知れず涙したことや、悲しみにうちひしがれたことや、生きる意味を自問自答したこと、誰かを傷つけたり悲しませたりした後悔やなんかが折り重なってこびりついてしまったものなのではないかと思う。
でも、だからこそ、その傷を癒しに変えるようなしたたかさも持っているんじゃないかと。

長いこと生きてりゃ、だんだんくすみもこびりつく。
純白に憧れこそしても、いつまでも真っ白ではいられない。
いつの頃からか僕は、くすんだアイヴォリーの方が、純白よりもずっと素敵な色なんじゃないかと思うようになった。









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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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