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音のパレット〈群青色〉

秋の夕暮れはつるべ落とし。
とっぷりと暮れていく空は、そそくさと茜色から深い藍色に変わっていく。
あっという間に夜の世界へ舞台転換だ。

夕暮れの後に訪れる群青色は、とても好きな色。
じゅうぶんに深い闇と、どこかこざっぱりと割りきったような明るさを湛えた色。
群青色には、むやみに戯れず交じりあわない孤高の雰囲気と、内に秘めた情熱と、なるようにしかならない世界への諦念や無常感を混ぜ合わせたようなイメージがある。
そんな世界で生き延びていくんだというしたたかさも含めて、迷いのない確信を感じる色だ。



群青色が世界を覆い始める夜の入り口によく似合う音楽、例えばドナルド・フェイゲンの“The Nightfly”。
明るさを湛えつつ、どこか深い闇を抱えているような音楽だという印象が僕にはある。


The Nightfly / Donald Fagen

クリアでスムーズな音像、口どけのいいメロディーやコーラスは確かにとても洒落ていて耳なじみがいい。
その一方で、どこか緊張を強いられるような張り詰めたものが感じられる。
醒めた視点のようなもの、或いは皮肉のきいたセンス・オブ・ユーモア。

ポップできらびやかなリズムや軽やかなエレクトリックピアノの音の洪水の中で、エレクトリックギターだけがブルージーな音を奏でている。



闇の中でいかに明るさを見つけることができるか、闇を受け入れながらもどれだけ明るさを失わないでいられるか。
絶望の中の希望と言ってしまうととても陳腐だけれど、そういうことに自覚的であるかどうかは、現代社会に暮らす人間にとって大きなテーマなのだと思う。
ブルースを取り込みながらもポップであること、つながりを大切にしながらも孤独を恐れないこと。
そういう心情を色にすると、群青色になるような気がする。

じゅうぶんに深い闇と、どこかこざっぱりと割りきったような明るさを湛えた群青色の夜空を、赤とオレンジの灯りを点滅させながらジェット機が横切っていった。






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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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