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音のパレット〈クリスタル〉

「クリスタル」は色なのか?という疑問はとりあえず置いといて。

クリスタルとは、そもそもは結晶のこと。古フランス語の氷、氷のような鉱物の意であるcristalに由来し、狭義では水晶のことを指す。
水晶は、交流電圧をかけると一定の周期で規則的に振動するため、この原理がクォーツ時計などに用いられらたりする。
ちなみにこの水晶圧電効果を発見したのは、ピエールとジャックのキューリー兄弟だ。


Close To The Edge / Yes

イエスの音楽は、とても鉱物的だと思う。
硬くてゴツゴツした印象の演奏は、表面がツルツルとしていて隙がなく、とても純度が高い。
クリスタル・ヴォイスと称されるジョン・アンダーソンの透明感と緊張感の高いハイノートがその印象を強くさせている。
また、きっちりした構成と演奏の正確無比さも、どこか水晶時計の正確なピッチに似た印象がある。
有機的に絡み合っているというよりは、それぞれがガラスの檻の中でプレイしているような、そんな孤独と絶縁の中でのコミュニケーション。
緊張の綱渡りの中での自己表現。



永久凍土の眠りから覚めたマンモスが、透明な檻の中で暴れている、そんな演奏。
シベリアの大地を吹き抜ける風や、氷河がゆっくりと軋む音が、音楽のすき間に埋め込まれている。
太古の昔から地球上に鳴り響いていたような音楽、あるいは地球上の生き物が死に絶えても鳴り続けているような音楽。
人の営みとは無関係な場所で鳴っている。



クリスタルといえば、今年一番見かけることが増えた色でもある。
いわゆる飛沫感染防止のためのアクリルの仕切り。
緊張を強いられる毎日がほんとうに日常になってしまった中で、クリスタルに仕切られてしまったコミュニケーション。
見えるけど触れることのままならない世界で、新しいコミュニケーションのあり方が問われている。
手がかりは、イメージをどうやって共有するか、だと思う。
同じイメージを共有して、個々で磨いたスキルを連動させていくようなことっていうのは、できないことではないはずだけどけっこうハイレベルなスキルなのかも、とイエスの演奏を聞きながら思ったりもしていた。






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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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