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音のパレット〈ブラウン〉

ロックの長い歴史の中で、色の名前で呼ばれるレコードが3枚だけある。
ビートルズの“ホワイト・アルバム”、プリンスの“ブラック・アルバム”、そしてザ・バンドの“ブラウン・アルバム”。
バンド名を冠したタイトルが他のレコードとの差別化が難しいことやそもそも名前がつけられなかったことから、アルバム・ジャケットの印象でそう呼ばれたに過ぎないのだけれど、ザ・バンドの“ブラウン・アルバム”は、通称と音の印象が見事に一致している気がする。


The Band / The Band

ザ・バンドの音にあるのは、土の匂いや木の香りだ。
素朴で古くさくて田舎っぽい、ということもあるんだけど、土や木のイメージがするのはそれだけではない。

密度が違うのだ。
コンクリートや鉄に比べて、すき間がものすごくある、という印象。
空気感がある、すかすかで風通しがよくて、包みこんだ空気を暖めるような雰囲気がある。

香りが立つ。
表側を焼き上げたお肉のようにジューシーな肉汁がしたたり落ちてくる演奏がある。

旨みがある。
燻製のベーコンやしっかりと干した魚の干物やビーフジャーキーのように旨みが凝縮されている。

かと思えば、枯れたような演奏もある。
それにしたところで、やはり枯れ木や落ち葉ならではの独特の香りが残っているんですよね。
そういうトータルの印象として、やっぱりブラウンがよく似合うと思うのだ。



絵の具でブラウンを作るには、黄色と赤を混ぜてから少しの黒を加える。
この色の要素が、ザ・バンドの音楽の要素ととても近い気がする。
音楽の土台となるリズムは、赤くファンキーな色。ピアノとオルガンはやや黄色っぽい。
そこに、黒が混ざるのだ。
その黒は、簡単に言うと“ブルース・フィーリング”ということだろうか。
ロックンロール的な表現が赤、ラグタイムやジャズっぽさが黄色、ブルースが黒。
或いは、アメリカの大地にへばりつくように畑を耕し作物を収穫する農民たちのエネルギーが赤、厳しい暮らしの中で人生を楽しもうとする庶民のバイタリティーが黄色、そういう暮らしどうしようもないやるせなさや果てしのない希望のなさが黒、とも言えるだろうか。

黒の配分が多くなりすぎると美しいブラウンにはならない。
黒の要素が少なすぎればオレンジや柿色でしかない。
そういう絶妙のバランスで成り立つブラウンは、実は人生そのものなのかもしれない。
そしてザ・バンドの音楽は、喜怒哀楽のすべて、人生そのものを奏でているからこそ、誰の心にも響くのかもしれない。










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コメント

[C3397]

Bach Bachさん、こんばんはー。
このアルバムは、嫌いだという人はまずいないんじゃないかと思います。
20世紀半ばまでのアメリカ音楽の集大成みたいなところがありますね。
お酒がすすむアルバムでもあります。
  • 2020-11-02 22:42
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3396] 大好きなアルバムです!

この枯れた感じ、大好きです!はじめて聴いた若い頃にはまったく分かりませんでしたが、ある程度大人になってから聴いたら、体の芯からしびれました。アメリカのさびれた田舎町、みたいな。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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