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The Boys Of Summer

夏も終盤のニオイを感じると聴きたくなってしまうアルバムのひとつが、ドン・ヘンリーの“Building The Perfect Beast”。
セピア色の落ち着いたアルバム・ジャケットにふさわしい、大人の渋さがむんむんと匂いたつようなレコードだった。


Building The Perfect Beast / Don Henley

リリースは1984年。
長年のロック・ファンの間では、イーグルスらしさが感じられない、80年代っぽい打ち込みサウンドが似合わないと不評だったようだけど、シングル・カットの“The Boys Of Summer”は、そんなオールド・ファンの嘆きなど意に介さずヒット・チャートを駆け昇っていったのだった。
当時高校生でイーグルスにさしたる思い入れのない僕にとっては、ドン・ヘンリーは“Voice of Hotel California”であるよりもこのアルバムの人、という認識が強い。

最初聴いたときには、どっちかっていうと引っ掛かりが少なくて、まぁよくできたポップ・レコードっていう印象だったんだけど、これが年を重ねるごとにどんどんとよくなっていくから不思議だ。
今聴くととってもダサい感じのする、80年代独特のスカスカで抜けのよい音空間に、なぜかノスタルジーすら感じてしまうのだ。



誰もいない道
誰もいない浜辺
肌に触れる風に感じる
夏は過ぎ去ってしまったと
空っぽの湖
空っぽの街路
太陽が孤独に沈んでいく
あなたの家まで車を走らせる
あなたはいないと知っているのに

僕には見える
太陽に照らされた褐色の肌
髪をとく姿
サングラス
あなたを愛する気持ちは
まだまだもっと強くなっていく
夏の少年たちが去ってしまったあとも

(The Boys Of Summer)

夏の少年たちが去ってしまったあと。
これが暗示するものは決してイーグルスの解散だけではないだろうけど、そういう気分も敢えて一枚噛ませてみたのではないかという気がする。
解散しても尚、まとわり続けるイーグルスの幻影。イーグルスっぽいものを求めるファンたち。
そういうものたちへ向けて、もう夏は終わったんだと語りかけるメッセージ。
そして、それでも音楽への愛や情熱はより強くなっているんだ、というドン・ヘンリー自身の立ち位置の表明。
このとき、ドン・ヘンリーはまだ37才、若き日の栄光に殉ずるにはまだ若すぎる。
夏が終わったあと、長い秋や寒い冬を僕たちは生きていかなくてはいけないのだし、実際のところチキンレースで消耗戦の真夏よりも、秋のほうが実り豊かなのだし。

I can tell you
my love for you will still be strong

夏は退却し過ぎ去っていくものだけれど、秋は深まっていくもの。
愛もそういうものであるといいな。





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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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