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世界の起源: 人類を決定づけた地球の歴史


世界の起源: 人類を決定づけた地球の歴史 / ルイス・ダートネル

「世界の起源」といういかにも大げさなタイトルのこの本は、気候の変動や大気や海流の循環、その大元になるプレートテクニクスやマントルの対流が、どれほど大きく人類の歴史に影響を及ぼしたかを解説したもの。
霊長類の進化や農耕の開始、文明の勃興や発展など、人間の歴史は常に地球がもたらす地質学的な影響を受けてきたということがたくさんの事例を元に語られる。

現生人類のルーツは東アフリカの大地溝帯の近辺。
だが、なぜその地であったのか?
大地溝帯の辺りは、日本とは逆にプレートがどんどん離れて引き裂かれている場所で、元々は熱帯の湿潤な森林だった場所が引き裂かれ、凹凸が激しい乾燥地域になった。
人間が樹から降りて暮らすようになって、二足歩行と手を使った道具による能力の補完で他の動物より大きなアドバンテージを得たことは知られているけど、その原因は地質的な環境変化だったということらしい。
森林の樹上で暮らしていた私たちの祖先は、環境の変化で森から出ざるを得なかったのだ。

人類の文明はいずれもプレート上の境界で勃興しているとのこと。火山による肥沃な土や水源のほか、プレートの境界ではかつて海底だった地層が地表に露出して、希少金属が得やすかったのも理由のひとつ。
人類が現代でもカロリーベースの大半を依存しているイネ科の被子植物ーイネ、小麦、トウモロコシーが発展したのは、氷河期が終わり間氷期を迎えたからだそう。
大航海時代にたくさんの人々が海へ出たのは、地球の自転と海流が作り出す風の循環のパターンを読み取ることができたからこそ。
エネルギー社会を支える石炭や石油は、太古の樹木が地中に埋没した結果生み出されたものだけど、そうなるプロセスには、植物が大繁栄した時代と、それに続く氷河期が大きく関係していること。
などなど。
私たちの今の暮らしは、すべて、地質的な影響によってもたらされている。

ワールドワイド版ブラタモリみたいなこの本、梅雨のあいだ中、黙々と少しずつ読んでいた。
そういう地球規模の大きな環境変動に比べれば、梅雨明けがちょっと遅いくらいはなんてことないんだろうし、異常気象と呼ばれるいくつかの事象も大きな大地の振動も起こるべくして起きているわけで、ま、そういうところに住んでいる以上どーにもならんことなんだろうね、って思えるようになった。
っていうか、そもそも人類の繁栄そのものが、この地球のいろんな偶然が重なってたまたまできあがったもの。
うたかたのものなんだと思えば恐怖も薄れる。

序文にはこういう言葉があった。

僕らは皆、地球上にあるあらゆるすべての生命と同様、文字どおり地球から作られている。
人の体内にある水はかつてナイル川を流れていたものであり、それがインドにモンスーンの雨となって降り、太平洋で渦を巻いていたものなのだ。細胞内の有機分子に含まれる炭素は、僕らが食べる植物によって大気中から取り出されたものだ。汗や涙の中の塩分や、骨の中のカルシウム、血液中の鉄分はみな地殻の岩石から侵食されてきた。髪や筋肉のたんぱく分子に含まれる硫黄は、火山から吐き出されたものだ。


そうなんですよね、そもそも。
普段当たり前過ぎて考えたこともないけど。
悠久の宇宙の時間の中のほんの一瞬、生命としての時間を過ごして、また元の素材に戻る。
そういうものだと思えば心も軽くなる。
そういう意味でも、なんだかスッキリとしない気分の今を、晴れやかな気持ちにさせてくれる書物でした。







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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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