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音のパレット〈菫色〉

どんよりとした梅雨空が続く毎日。
のっぺりと低く覆う雲と、だらしなく降り続く雨、滞るモヤモヤ感とのぼせる湿気、じとじと。
なかなかスキッと晴れ晴れした気分にならないのは、お天気のせいばかりでもないもだろう。

どんよりともやもやした気分、内に籠ってしまうような気分の中で脳内再生率があがるのは、例えばルー・リードだ。

ルー・リードの音楽は何色なんだろう。
全体のトーンは黒系、ただし漆黒というよりはモノクロームやグレーに近い。
長いキャリアの中の「Belrin」なんかは仄暗くグレーや黒がきついし「Blue Mask」以降は鋼のような強度が加わった色合いに変わってくるのだけれど、トータルの印象ではルー・リードの音楽は薄紫だと思う。
薄い紫、すみれ色、ヴァイオレット。

ぼそぼそと呟くような歌、ノイジーなギター、けれど意外なくらいに美しいメロディーとピアノやストリングスの耽美的な響き。
基本のトーンは暗いけれど、うっすらと明るさもある。死んだ魚の腹のように銀やオレンジや青も入り交じった複雑なグレーに、紫のようなちょっと歪んだセクシーさや毒々しさも含んで、それを希釈させたような色の感じ。


Transformer / Lou Reed

このアルバムで一番美しい曲、“Perfect Day”はこんな歌だ。

完璧な一日
公園でサングリアを飲んで
しばらくぼんやりして暗くなったら
家に帰る

完璧な一日
動物園で動物に餌を与え
映画を観て
家に帰る



なんてことのない平穏な一日の様子が描写された歌詞は、それだけを読めばとても穏やかだ。
だけど、ルー・リードが歌えば、そこになにかしらの不穏さが混じる。
リタイアした老人のようにぼんやりとした諦念が淡々と歌われていく中でギラリとナイフのように光る何かが歌の光景の向こうに広がっていく。

“Satellite of Love”についても同じ印象。

人工衛星が空へ打ち上げられた
それを観ていたら錯乱してしまった
しばらくそれをぼんやり眺めていた
テレビを眺めるのは好きだ
愛の人工衛星



静かにテレビを眺めている日常的なひとこまの中にうっすら浮かぶ狂気。

奇妙なまでの静けさとうっすらと歪んでいく感が、ぼんやりと穏やかにどうしようもなさを醸し出しつつも、どうしようもなくっていいんだと淡々と現実を受け入れていく感覚。
その佇まいは、薄紫の花のように妖しくも凛とした輝きを放っている。






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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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