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音のパレット〈鉛色〉

低気圧が張りだしてお天気は斜め模様。
分厚い雲が地の果てまでも続いている。
気圧は低く、湿気は高く、どんよりとした重たい空気で気分も澱みそう。
近づいてくる暴風雨の予感。
そんなどんよりとくぐもった空のことを「鉛色の空」と呼んだりする。

鉛色といえば、僕がイメージするのはレッド・ツェッペリンだ。
赤銅色に錆びて朽ち果てた巨大戦艦が、鉛色に荒れ狂った海を漂流している。
鉛色に重くのしかかる不穏さ。
預言者の不吉な言葉に誰もが呑み込まれていく。


Led Zeppelin / Led Zeppelin

レッド・ツェッペリンのLedはそもそもはLead=鉛、の意味。
リードとの誤読を恐れてLedにしたのだそうで、ヒントになったのはザ・フーのキース・ムーンの口癖“go down like a lead balloon”だったのだとか。go down like a lead balloonとは「ポシャる」というようなニュアンスの慣用句で「巨大飛行船」というイメージよりも先に「鉛」という言葉が彼らのサウンドのキーワードになっていたというのは興味深い。

鉛は古くは「あおがね」ともいわれ、軟らかくて加工しやすいことから古代より使用されてきたそうだ。
金が「こがね」、銀が「しろがね」、銅が「あかがね」、鉄が「くろがね」、そして鉛が「あおがね」。
鉛色は青みがかったグレー。
確かに鉛のイメージ通り、鈍重だけど、どことなくフレキシブルな雰囲気がする。
黄金や銀より遥かに鈍く、鋼鉄のように硬くはないが、どこか狂暴な毒を秘めていそうな色。
そのイメージもレッド・ツェッペリンと一致する。

ツェッペリンの音楽は、崇高で完璧に構築されているように見えて、けっこう思いつきのリフだけでできあがったようなルーズな曲があったりわりとアバウトなところがあったりする。
元々ブルースから影響を受けたバンドだからそれは当然なんだけど、それが楽曲として構築されていく過程でどこか崇高なまでの独特の孤高さが生まれてくる。鋼鉄のような頑丈さと精密機械のような繊細さが違和感なく同居するのがこの四人のマジックなのだと思う。
金属なのにどろりと溶けては異質なものと混ざりあって姿を変えていく不可解さと大胆さ、容赦のなさ。
そしてその感じは、鉛のように不遜だ。



鉛色はすべてを呑み込む。
鉛色はすべてを台無しにする。
鉛色の森、鉛色のりんご、鉛色のうさぎ、鉛色の表情、、、
色合いを鉛色に変えるだけで、黒よりも、灰色よりもその無慈悲感が強烈な気がするのは何故だろう。






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コメント

[C3382]

BachBachさん、こんにちは。
ツェッペリン=鉛色。
名前と、ジャケットのイメージに思いっきり引っ張られてますが。
でも、バンド名やアルバムジャケットのイメージと音が一致するのは大事なことですね。
このバンド名とジャケットでカーペンターズみたいな音だったら、かなりがっかりする(笑)。

重いまま引きずる、跳ね返す強度、ほんとその通りですね。

  • 2020-07-01 07:42
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3381]

このアルバム、たしかに鉛な印象が僕もあります。ジャケットがもろにそうですが、抜けきらないというか、重いまま引きずる部分とそれを跳ね変えず強さのふたつが共存しているというか。失業者だらけで世界の覇権を失った当時のイギリスの世相を反映しているみたいに感じたり…それってやっぱり鉛ですよね(^^)。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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