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これから泳ぎにいきませんか


これから泳ぎにいきませんか / 穂村弘

>知り合いの青年に「本は読まないの?」と尋ねたら「ほむらさんはダンスしないんですか?」と聞き返されたことがあります。読書は人生の必修科目でダンスは選択科目、というのはもう古い感覚らしい。

まえがきにあるこのエピソードに、はっとさせられる。

人の価値観は、あまりにも様々だ。
ダンスをしない人間は当然、ダンスの素晴らしさを知らない。ダンスをしない僕が、ダンスなんて馬鹿馬鹿しい、と言及することはできないのだ。
だからといって、無理にダンスをしたいとは思わないし、ダンスが素晴らしいからと押し付けられるのもごめんだ。
読書をすることはなんとなく善いこととされているけれど、それは読書をする側の一方的な思い込みにすぎないし、善いものだと誰かに強制できるものでもない。

穂村さんは、この青年からの問いかけに、こう考える。

>楽器やスポーツのように読書は、趣味の範疇なのか?
読書は言葉と大きく関わっている。
他者とのコミニュケーションだけではなく、人間は言葉を通じて世界を認識している。
心の中で無意識に言葉を使っているように、人間は言葉の介在なしに生きることはできないんじゃないか、そういう意味で読書には特別な意味がある、と思いたい。


あぁ、そうそう。
そうだと思う。

しかし。
本当にそうなのか?

ダンスという表現による身体性、それはひょっとしたら「言葉」よりも「音楽」よりも先に人類が獲得した表現方法で、現代人はそのことをあまりにもないがしろにしているのかもしれない。
言葉は取り繕える。けど、身体性を伴う表現では取り繕ったものはすぐにバレる。
対面して相手の表情を見て指示を受けるのと、メールの文面だけで指示を受けるのでは、理解度合いはまるで違うことってある。表面上は同じでも、その指示に含まれる真意までは、メールではなかなか読み取れない。
これはコロナの渦中でも経験したばかりだ。
すれ違いが続いた恋人や親友でも、会って相手の表情を見ればすぐに誤解が解けたりもする。
そういう意味でも、言葉に変換して考えるのではなく、もっと直感を大事にすべきなんじゃないのか、と。

・・・なんてことを思いつつも、僕も読書を通じて得た言葉に頼って自分を構築し表現してきたタイプ。
穂村さんの意見に本当は共感しているのだ。
でもどうなんだ、ああなんだ、ということをやはりいちいち言葉を使って考えている。
わざわざ言葉に変換しないと理解納得しない、というのはとても厄介だ。
でも、そういうものなのだ。
少なくとも自分はそうなのだから、あきらめてそういう世界で過ごしていくしかない。

・・・ということも、言葉で考えて理解納得しようとしている(笑)。



ちなみにこの本は、歌人の穂村弘さんによる書評集。
世代が近いせい、また、クラスの端っこでグズグズな少年時代を過ごしたであろう生い立ちのせいか、不思議に親近感を覚える人だ。
歌人になったのは、俵万智さんの「サラダ記念日」を読んで、これなら自分にもできそう、と思ったからだそう。
その動機の安っぽさが、ブルーハーツを聴いてバンドを始めた少年みたいでいいな。
この本には、まるで知らない歌人の句集なんかも紹介されているけれど、吟味された言葉がとても瑞々しくて心地よかったりするのです。

本当はこうやってうだうだと文章を書かずに、短歌のように五七五七七の中でスパンと、或いはじわっと、もやっと、気持ちを伝えることができればいいのに、と、そういうときに思っちゃうんだけど、こうしてうだうだと長文を書くのが自分にはよく合っているのだと思うことにしておく。





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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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