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オン・ザ・マップ ー地図と人類の物語ー

知らない町を訪れるとき、地図は必需品だった。
一晩を夜行バスで明かしてたどり着いた町のインフォメーション・センターで簡単な地図をゲットする。
現在地を確認して、その町の目ぼしい場所を探す。
歩いていけるのか、バスに乗るのか。
地図さえあれば、多少道に迷っても問題ない。
自分の現在位置と目標の位置さえ把握できれば、問題は半分以上片付いたようなもの。その差をどうやって詰めるのかさえ考えればいい。



幼い頃から、地図を見るのが好きな子どもだったらしい。
万博のときに買ってもらった世界地図なんかを飽きもせず眺めていたらしい。
そんな地図好きとして、地図にまつわる歴史やエピソードをちりばめたこの本は、とても楽しい読み物だった。


オン・ザ・マップ ー地図と人類の物語ー / サイモン・ガーフィールド

例えば。
北極星を基準として地図の上を北にしたのは2世紀古代ローマの地理学者プトレマイオスだった、とか。
アメリカ大陸とおぼしき大陸が、コロンブスのアメリカ発見より500年も前の北欧バイキングの海図に示されている、とか。
空想で描かれたアフリカの山脈がいつの間にか実在のものとされて、90年近くも地図上に記されていた、とか。
ロンドンで発生したコレラの被害を食い止めるのに、発症者の分布を調べた地図が大いに役に立った、とか。発症者をマッピングして、下水口よりも下流に分布が偏っていることから、汚水に原因があることが突き止められたのだそうだ。
そういう諸々のエピソードが楽しい。

コロンブスのアメリカ大陸発見は地図の進歩とともにあった。
マルコ・ポーロの旅行記があって、トスカネリの地球球体説にインスピレーションを得ての航海、そこには当然地図があった。
第一次世界大戦当時、アフリカの地図の内陸部は空白だったそうだ。ヨーロッパ人が到達していなかったので誰も何も書けなかったのだ。その「空白」が「からっぽの土地なら早い者勝ちで奪い取ってしまえばいい」という植民地主義的発想につながったのだそうだ。



地図の存在が、人間の思考すら変えてしまうこともある。
そういう意味で、地図という道具も、人間社会の中のひとつの概念を表すひとつの表現手法なのだ。
そこにはときに、製作者の意図が混ざり込むことも知っておかなければいけない。
日本で使われる世界地図は日本が世界の中心だけど、欧米で使われる世界地図では一番端っこの小さな島だ。
世界をどこから眺めるか、世界の形を図に写すときにどこをどう切り取るかで世界の見え方は変わる。

達成へのロードマップを描く、なんていう言い方があるけれど、迷ったときには、自分の位置を地図という座標に落としてみると、自分を取り巻く状況がよく見えたりもする。
そういう思考方法を僕は地図から学んだのだと思う。



自分の現在位置と目標の位置さえ把握できれば、問題は半分以上片付いたようなもの。その差をどうやって詰めるのかさえ考えればいい。








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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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