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音のパレット〈黒〉

黒は強さの色だ。
力強い、パワフルという強さではなく、頑丈さ。いわゆる強度の高さ。
象に踏まれても潰されない強さ。
どしっと構えてたじろがない強さ。
石の上にも何年的な我慢強さを含む頑丈さ。
黒はまた、闇の色でもある。
闇の中では何にも見えない。
何にも見えないということはある意味何物にも惑わされないということで、やはり黒は強さの色だと思う。

そういう強さを持った音楽といえば、これを思い出す。


The Best Of Muddy Waters

ブルースの父、マディ。
初めて聴いたのは18の頃だ。
ローリング・ストーンズがマディの曲名からバンド名をつけた、そう聞いて是が非でも聴いてみなくっちゃ、ロッカーならばロックンロールの父であるマディを聴くのは当然だ、そう思って聴いてはみたものの。

重い。
暗い。
楽しくない。

かっこいいとは思うけど、まるでサウナで我慢比べをしているような蒸し暑さだ。じっとりと脂汗をかいてくるような重い演奏だ。
これのどこがいいんだ?という素朴な思いを押し鎮めて、「これをいいと思えなきゃ男じゃないぜ」なんて我慢比べのように聴いていたのだ。
若かったのだな(笑)。

マディの音楽はタフだ。
そのタフさは、今なら少しわかる。
マディは、独りでいることの確かさを知っている。
真っ暗闇の中に取り残されても決して騒がない、嘆かない、わめかない。
ハナから夜明けが来ることなんて待ち望んではいない。
淡々と、まるでひとつの黒い塊になって時が過ぎてゆくのをひたすら耐えている、っていうか、そのことがすでに自分自身の存在証明であるかのくらいになじんでいる。
そういう強さを持っている音楽だと思う。
マディを聴くたびに、あんたのように強くなれる人はそうそうはいないよ、ってあきらめてしまうのだけれど。

暗闇の洞窟のように奥深く。
宇宙空間のように底知れず。
黒曜石のように硬く、切れ味するどく。
カラスのように鮮やかで我が物顔で。



緊急事態宣言が解除されて、街には人が戻りつつある。
けれど、前と同じ、ではない。
ひとりひとりの強さが試される時代が来るのだろうと思う。
丁寧にひとつひとつの行動を積み上げながら、我慢強く自分を律していかなければいけない。
空中の一本の綱をバランスを取りながら渡っていくような緊張感。
油断したらまっ逆さまだ。

マディのような辛抱強さを。
黒い固まりのような我慢強さを。
そう願いはするけれど、人間そこまで強くはないのだろうな。







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コメント

[C3378]

BachBachさん、こんばんはー。
マディーはほんと、重たすぎてとっつきにくいです(^_^;)
サウナで我慢くらべしてるうちに、じっとり汗がにじんできて、だんだんそれが快感になってくるような感じで、毛穴が開いてから聴けるようになった感じです(笑)。
でも、あんましょっちゅうマディーを聴きたくなるような精神状態にはなりたくないですかね。。。
  • 2020-06-08 23:29
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3377] 僕も最初は

このアルバムも、シカゴのバンドブルースも、その良さが分かりませんでした。戦前ブルースの馬鹿テクのギターとものすごい表現力に比べて、スッカスカですしね。
突破口はハーモニカでした。リトル・ウォルターにビッグ・ウォルター、ジュニア・ウェルズ、ジェームス・コットン。あの強烈なベンドとトレモロに気づいた時から、シカゴブルースの道が開けました。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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