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音のパレット〈深緑〉

5月、初夏。
さわやかな季節。
この時期のイメージはやはり緑だ。
青々と映える新緑。
たおやかに繁らせた枝と葉を、太陽の光のあたる場所へ伸ばしていく。
あの深い緑の中にみなぎる生命力。
人間の世の中ではいろいろあるけれど、植物たちはそこにある環境の中でいかに生きていくかということだけに一所懸命で、そのシンプルさや潔さはほんの少しの安堵と勇気を与えてくれる。

植物は脳や神経、筋肉、呼吸器や消化器という私たちが備えているシステムを持たない代わりに、もっとダイレクトに、それぞれの部分が受け取った感覚がそのまま即反応して生命を維持する構造を持っている。
葉緑素は太陽の光が当たれば光合成を行う。根っこは水を探し当てては吸い上げる。そういう各部分のシンプルな反応によって構成されるひとつのシステム。
そうやって生きている生き物とそうでない生き物に優劣の差はない。
だから、生命の反応によってただ生きているということだけで、じゅうぶん肯定されていいと思うのだ。
何かを生み出さなくても、誰の役にも立っていないように見えても。

さて、深緑の音楽。
ジャズです。
アート・ペッパーの“Meets The RhythmSection”。
部分が受け取った感覚をダイレクトに反応する構造を持っている点で、ジャズは一番生命の生々しさを持っている音楽だと思うのです。


Art Pepper “Meets the rhythm section”

このアルバムに遺された音には、地下室のじめじめした陰鬱なジャズとは違う、独特の明るさ、力強さがある。
明るいといってもパーリーピーポーのバカ騒ぎな明るさではない。力強いといってもボディービルダーのようにただ馬力があるパワフルさではない。
明るいお日様の光を浴びて新緑を湛えた木々の、そんなきりっとした明るさと力強さ。
このアルバムのそういう感じの音が好きだ。
善とか悪とかポジティブとかネガティブといった人間が拵えた価値観とはまるっきり無関係な、ただそこに鳴っている音がとても心地よい。
大きな木の影に寄り添っているような、安らぎや生命力のエネルギーをもらえるような。



深い緑色は生命力の色。
ただ生きているというだけで、それはじゅうぶんに祝福されるべき奇跡だ。






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コメント

[C3370]

つき子さん、こんばんはー。
そうですねー、確かに。
イメージとしては深緑というよりは新緑の色、艶のある緑色の感じです。
艶緑?

一年で一番清々しい季節、コロナのことはおいといて、個人的なしあわせを楽しみましょう♪
  • 2020-05-08 20:31
  • goldenblue
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  • 編集

[C3369]

私の中では今の季節は新緑です。深緑はもうちょっと後の時期かなぁ。みずみずしい青葉、それだけでシアワセ感です。
  • 2020-05-08 12:44
  • つき子
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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