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座右の名曲(5) ガラスのジェネレーション

佐野元春
ガラスのジェネレーション




佐野元春のセカンド・アルバムの一曲め、“ガラスのジェネレーション”。
この曲のラストでキーを上げてシャウトされるフレーズは、一瞬で高校生の僕にガツンと突き刺さったのだった。
それはまるである種の神託のようだった。

“つまらない大人には
なりたくない!”


物わかりのよい子どもではなかった僕は、何かにつけて親や教師のやることに文句をつけていた。
呼び出され、お説教を受けるたびに教師はこう言った。
「お前も大人になればわかる。」
そんなお説教を聞くたびに、うんざりしていたのは、教師も僕の主張が半ば正しいと感じつつも、世の中いろいろあるんだよ、そんなに甘くないんだよ、って、自分が理想をあきらめた言い訳に使っているように感じたからだと思う。
自分に嘘をついて、ごまかして、自分で自分の人生を否定している。
大人なんてつまらない。
大人になんてなりたくない。
少なくとも僕はあんなふうになりたくないな。
そんな気分の高校生に、佐野元春のシャウトはストンと心に落ちてきたのだった。

“大人になんてなりたくねー”みたいな歌を歌う人はおそらくそれまでもたくさんいた。
“大人になる前に死んでもいい”って歌う人もたくさんいた。その中には実際死んでしまった人もいくらかいた。
ガラスのジェネレーションは、そういう成長の否定とは少し違っていたのだ。
“大人になりたくない”ではなく“つまらない大人にはなりたくない”、という言葉。
それはつまり“つまらなくない大人になるんだ”っていう意思表示。
そこには絶望ではなく、ポジティブな意志があった。

“ガラスのジェネレーション、さよならレヴォリューション”っていうメッセージは、佐野さん自身のひとつ上の世代に向けて歌われたメッセージだと言われている。
いわゆる全共闘世代へのメッセージ。
革命を叫びながら、革命をおもちゃにして、結局まるごと青春の思い出にして収まってしまった世代。
なるほど、そんなふうにも聞こえる。
当時はそんなことよくわからないまま、ただのゴロ合わせだと思っていた。
でも、そんなことはそもそもどうでもいいんだ。
そんなメッセージ以上に、聴き手をポンっとはじけさせてしまうような何か、いわゆるロックンロールの魔法がこの曲にはある。
跳びはねていくようなリズムの勢いとか、ダディ柴田のサックスソロとか、“Oh,Yeah!”とか“All Right!”みたいなシャウトとかの中に、ロックンロールにしか表現できない何かがある。
それだけでじゅうぶんだった。

おぉっ、かっこいい!
あの頃そう感じたサムシングを今も持ち続けていられているか?
この曲を思い出すたびに、そういう思いに立ち返ることができる。

OK、まだまだだいじょうぶだ。
周りから見たらじゅうぶんに大人でも、僕はまだ、何度でも佐野元春と一緒に歌える。

“つまらなくない大人には
なりたくない!”



Heartbeat / 佐野元春






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コメント

[C3360]

非双子さん、こんにちはー。

“つまらない老人にはなりたくない!”

ほんと、ここからはそうですね。
たぶん老人のイメージもこれからだいぶ変わっていくような気がします。
  • 2020-03-29 13:36
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3359]

“つまらない老人には なりたくない!”

プータローになった今でも、我が道を楽しんで居ります!
目線を変えれば、面白い事がイッパイ有るんですよね~
  • 2020-03-29 13:12
  • 非双子
  • URL
  • 編集

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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