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令和二年の閏日

閏日とは、暦の上の季節と実際の季節とのズレを調節するためもの。
太陽暦のユリウス暦では一年を365日としているが、実際には地球は太陽の周りを365日5時間48分45秒で一周するため、だんだんとズレが出てきてしまう。
その差が年に約1/4日であるため、4年に1回、1日多くすることでそのズレを修正するのだ。

閏年という仕組みって、なんかいいな。
いつもはいないのに、たまーにさりげなくやってきては、ハイッ、あらよっ!てズレを修正する閏日の仕事ぶりは、腕のいい職人の仕業のようだ。
普段は気づきもしない微妙な、けど、放置しているといつの間にか大きなズレにつながってしまう案件を修復するというミッションを担った仕事人。
365日の正規メンバーではないにもかかわらず、ちゃんと自分の役割を果たして、また次の出番まで去っていく。
このさりげなさが、なんともかっこいいな、と。



腕のいい職人に例えられるミュージシャンはたくさんいる。
例えばブライアン・ウィルソン。
もちろん嫌いではないんだけど、ドラッグとか精神的な病とか、ブライアン・ウィルソンには苦悩する天才みたいな物語がついてまわって少し重苦しさを感じたりもする。
或いはスティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカー、10ccのグレアム・グルードマン、XTCのアンディ・パートリッジ・・・彼らに共通するのは、少し偏執狂的とすらいえるマニアックさやこだわりの強さかな。
いや、もちろんそれも悪くない。
悪くはないんだけど、ちょっと肩が凝る。
そうじゃなくって、もっとナチュラルにポップな音、あざといくらいのポップな音を生み出す職人といえば・・・あ、そうだ、ジェフ・リンだ。

この人の音楽は、素直にわかりやすくて楽しい。
ビートルズ直系の美しいメロディー、大仰すぎずかつ効果的なストリングス、玄人受けを狙った諧虐的な音ではなく、もっと開かれた音。
力みが少なく、かといってゆるいわけでもない独特のリラックス感。
ひねりはいろいろあるんだけど、ひねるためのひねりではなく、好きなことをやっていったらこんなんなりましたー、っていう感じがするんだな。



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The Very best Of E.L.O / Electric Light Orchestra



新型コロナウイルスに関するドタバタに振り回される令和二年の閏日。
総理大臣の独断には、深みもセンスもなく、あざとさしか感じられない。
「ここまでのところはどうやらしくじったなー、このままじゃーまずいよなー、オリンピックができなくなっちゃう。なにかドーンと、やってる感のアピールできることしなくっちゃ。」って匂いが残念ながらプンプンする。
そういうのに人間はすごく敏感なんですよ。

ジェフ・リンのポップスにはそういうあざとさがない。
スーパースターになりたい、金持ちになりたい、みたいなギラギラしたものもなく、ルックスだって超地味で、本当にポップな音楽が大好きなんだな、ということがにじみ出ている。だから聴き手が素直に受け入れることができるんだろうと思うんだな。

ウイルスに関しては、不安になるのは一番よろしくなさそうですよね。
他人のすることにケチをつけても仕方がない。
ハイッ、あらよっ!ってウイルスを退治してくれるようなスーパー職人みたいな存在に頼りたくなるんだけど、残念ながらそんなものはないわけで、自分で自分を守るしかない。
むしろ、入ってきたウイルスを退治する上でも免疫力を高めておくことが大事なんじゃないか、と。
ポップな音でも聴いて、明るい気分をキープするとかね。
なんて無責任な感想を呟いておくことにする、そんな令和二年の閏日でした。






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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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