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ブルースマンの恋

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ブルースマンの恋 / 山川健一

ブルースの本ってわりとたくさん出版されているけれど、名盤100選的なレコードの紹介+ブルースマンのバイオグラフ的なものをつらつらと紹介していることがほとんどだ。
そういう本っていうのは、もちろん読んでいるときは楽しいんだけど、結局はオタク的な知識しか残らないんだな。
知識は知っていて困らないんだけど、そのことで音楽を理解した気になるのはよろしくない。
そういうものって音楽の本質とはまるで関係がないものなのだ。

山川健一さんのこの本はそういう類いの本とは少し趣きが違って、ブルースマンの生い立ちやエピソードから想像力を広げて、ブルースマンたちそれぞれの恋愛や生き方を、敬意と愛情をもって語ろうとしている本だ。
彼らはどう生き、どんな暮らしの中から歌を紡ぎだしたのか。
遺された証言や遺された音楽から想像力を広げてブルースマンたちの人生をたどっていく、その物語の向こう側に、リアルなブルースマンの姿が浮かんでくる。

ロバート・ジョンソンのプレイを目の当たりにした、マディー・ウォータースとエルモア・ジェームスの物語。
友人の恋人に恋をし、友人の死とともにブルースを一度は捨てたサン・ハウスの物語。
陰鬱なロバート・ナイトホークのブルースの裏側に秘められた思い。
借りた名前の人物になりきってしまったサニー・ボーイ・ウィリアムソンの闇。
メアリー・リードの母のような愛情に見守られ、ポップでご機嫌なロッキン・ブルースを演り続けたジミー・リード。

単行本で出版されたときはハードカヴァーで、付録で本の中で紹介された9人のブルースマンの曲が一曲ずつ入ったCDが収録されていた。
そのCDを聴きながら、ひとりずつアルバムを集めていく感じでブルースの世界にはまりこんでいったのだ。

ブルースは決して明るい音楽ではない。
けれど、決して暗いだけの音楽ではない。
思うようにたちゆかない暮らしのやりきれなさや、嘆きや、悲しみや、苛立ちを歌いつつ、その芯にあるものは、とてもとても強い。
「がんばれ」とか「勇気を出して」なんて薄っぺらい言葉で語られるようなものとはまるで次元の違う、もっと根源的で生命力に溢れた強さ。

初めて読んだのは確か22、3の頃で、社会人一年目だったかな、どろどろでつまらない毎日への不満、漠然として先が見えない若さ故の不安、持て余したエネルギーのやり場のなさにへこたれかかっていた頃だった。
疲れてしまったときには、幾度もこの本を読み返した。
そうすると、いつの間にかエネルギーが回復していた。
今思い返せば、そんな音楽の強さからエネルギーをもらうことで、僕もいつの間にかタフになっていったのだと思う。









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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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