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進歩 ー人類の未来が明るい10の理由 ー

年が明けて2020年。
2020年という語感に近未来感を感じてしまうのは、80年代に接してきたいくつかのSF作品の影響だろうか。
例えば「ブレードランナー」で描かれていた2020年の世界では、環境破壊が進んだ結果、人類の多くは他の惑星へ移住。酸性雨が降りしきる地球では人造人間レプリカントたちが反乱を起こしていた。
例えば「AKIRA」では、第三次世界大戦の核爆弾で荒廃した東京が舞台になっていた。
いずれにしても昔のSF作品が描く近未来像ってネガティブなんですよね。
環境破壊、世界最終戦争、機械化社会の反乱、、、「ターミネーター」も確か2020年代の世界で、核戦争後に機械が人間を制圧するような話だったし。

実際の2020年はそれほどまでに深刻ではないにしろ、未来を見据えたときに、素直に薔薇色の未来像が描けるかというとそうではない。
アメリカと中国のパワーゲーム。アメリカとイランの緊張関係やペルシャ湾近辺の不安定さは日本の安全保障に大きな影響がある。
或いは人権弾圧やテロリズムや増殖する偏狭な国粋主義者たち。
プラスチックごみ問題をはじめとする環境問題。地球温暖化と異常気象。
人口爆発、食料危機、格差社会、貧困問題、超高齢化社会、超監視社会。
東南海地震、富士山噴火、原発問題だって結局解決しないまま先延ばしだし、新型インフルエンザのパンデミックの恐怖も消えたわけではない。オゾンホールはその後どうなった?マイ箸を使うくらいで森林破壊が止まったわけでもない。
未来に対する不安定要因は数えきれないほどあって、そういうひとつひとつのシリアスなニュースに接していると、とても明るい未来像など描くことができないのだ。

それでは、世界は本当に破滅寸前なんだろうか。
世界は日毎に悪くなっていってるのだろうか?
昔の方が人間は幸福で、人類は進歩しないほうがよかったのだろうか?



福島の原発事故のときに、「原発なんて即刻廃止、電気がなくなっても、明治時代の暮らしに戻ればいいだけのこと」と主張する人とちょっと論争になったことがあって。
僕とて原子力発電に諸手を挙げて賛成というわけではない。けど、電気がなくなれば、少なからず現代では救えている命が救えなくなる、労働はとてつもなく過酷になる。原子力という発電方法には人類が負いきれないリスクがあるのでこれに頼り続けるのはよろしくないけれど、電気を悪者にしてはいけない、と主張したのですが、その方はまったく聞き入れていただけませんでした。
現代を否定的に捉える裏返しで、過去の時代がユートピアに見える、ということはあり得ることだとは思う。
でも、本当に明治時代の暮らしは今よりよかったのか?
労働、衛生、社会的自由度、差別や格差。
僕にはどう考えても、現代より暮らし易いとは思えなかった。



そのときの僕の疑問を解消してくれたのが、お正月休みに読んでいたこの本でした。

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進歩 ー人類の未来が明るい10の理由 ー / ヨハン・ノルベリ

著者のヨハン・ノルベリさんはスウェーデンの歴史学者。
いろいろな視点からのエピソードを引用し、現代と過去をデータで比較して根拠を示している。

(食料)
・1600~1800年代、天候不順による不作はしばしば飢餓につながった。
機械や冷蔵保存、灌漑、化学肥料なしでは、作物の不作は常に起こりうる脅威で、通信や輸送がない世界では不作は飢餓に直結した。
・1800年代半ばの西欧での平均日量摂取カロリーは2000~2500kcalで、これは現代のアフリカ貧困地域以下の摂取量。
(衛生)
・コレラやチフス、ペストなど、安全な水へのアクセスがない時代、疫病の流行で人口が激減することが多々あった。
・1882年のニューヨークの住宅の下水道普及は約2%。
・殺菌された上水へアクセスできる世界人口は、1980年に52%、2015年には91%。
(期待寿命)
・食料事情と衛生状況の改善の結果、幼児や児童の死亡率が大きく低下した。
・医療と栄養の知識の進歩により、1800年代の期待寿命(生まれた子が平均何年生きられるか)は30才。1970年に50才、2010年には70才に伸びた。
(貧困)
・1800年代の最富裕国のアメリカ、イギリス、フランスでさえ、40~50%の人は現代でいう貧困状態で暮らしていた。
・1日1ドル未満で暮らす貧困世帯は、1850年に80%、2010年には10%。
(暴力)
・戦争と暴力はかつては人類の常態だった。競争し征服した相手を虐殺することは理にかなっていた。
・拷問や残酷な刑罰による見せしめ、生け贄もどこの集団でも行われていた。
・16世紀~17世紀にかけて、西欧列強国は75~100%の年に戦争を行っていた。
・第二次世界大戦以降、民主主義国同士の交戦は激減した。
・自由主義と経済相互依存の世界では、戦争は損失の方が大きい。
(環境)
・1960~70年代には増加の一方だった環境汚染は、技術革新により劇的に減っている。
・六大大気汚染物質の総排出量は、1980年~2014年で2/3に減少、酸性化臨界負荷量を上回る地域は1980年の43%から2010年には7%に減少。
・貧困であれば目先の経済利益最優先になるが、世界中が豊かになることで環境配慮の技術導入が促進される。
(識字率)
・1820年の世界人口比での識字人口率は12%、2015年には86%。若年層だけなら95%近く。

自由や平等に関しても、奴隷制度や人種差別制度は撤廃され、男女ともに参政権があるのは当たり前になった。
まだまだ地域差はあるものの、個人が自由に発言して処罰されることも民主主義国ではほとんどなくなった。
性別、生まれ、職業、特定の病気で差別されることも、まだまだ因習として残っているとはいえ、いけないことである認識はこの20年近くでずいぶんと高まったという実感があります。

総じて、文明発祥の4000年前から西暦1800年くらいの期間にはなかった変革がこの200年の間に起き、それはトータルでは明らかに多くの人生を豊かなものにしていた。
この期間に起きた変革を延長していけるならば、人類は今起きている問題に対しても何らかの解決策を見出だすはずで、人類の未来は破滅的ではない、というのがこの本の論旨。

では、人類史上最大級の豊かさを享受しているにもかかわらず、なぜ人類は未来を悲観的に捉えるのか。
著者によれば、それは情報量の問題ということらしい。
前提として、生き物は本能的に危機情報の収集には敏感であることがある。
1000分の999の安全情報よりも1000分の1の危機情報を見落とすことが生命の維持に関わる問題になる。
その本能のせいか、平穏なニュースは誰も喜ばず、事故や悲惨な事件の報道の方がウケるので、メディアもそういう情報が頻繁に流すことになる。
そういう情報に囲まれると、人間は世界を悲観的に捉えてしまうということなのだろう。


まぁ、数字なんていうのはどの角度からどういうふうに切り取ってくるかなので、この本に書いてあることをそのまま鵜呑みにするわけではない。
物質的に恵まれたことと心の問題がどうリンクしているかにも言及がない。
ただ、人類はずっと、置かれた環境を少しでも改善しようとする生き物なのだということにはもっと信頼を置いていいのかも知れない、とこの本を読んで思ったのです。

新年の始まりだしね。
悲観的になるよりも、明るい未来をイメージしたいですね。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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