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都会の野生

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いつも通勤で通る裏道はカラスが多い。
夜は飲み屋街で、深夜にゴミがたくさん出るせいだろう。
職場の近くには太閤秀吉ゆかりの巨大な公園があって、そこをねぐらにしているカラスたちが、朝飯を漁りにやってくる。
これを観察するのが朝の日課なのだ。

あいつら、すごいんだよ。

どんなに暑くても、こんなに冷え込んできても、いつもあの真っ黒姿で。
自分の食い物を毎日自分で探してる。
野生ってすごいよな。


人間は、自分一人の力で生き延びることなんてもはや到底不可能なほど野生から遠い生き物である。
自分の食べ物ですら、自分で見つけることができない。
どこかの誰かが狩猟や漁労をしたり飼育したり栽培したりしたものを、さらにどこかの誰かが加工したり包装したりして、どこかの誰かが運搬して値付けして販売したものを食べることで命をつないでいる。
遠くオーストラリアの牛肉、カナダの小麦、グリーンランド近海のさば、アイダホのポテト・・・国内で飼育された鶏が産んだ卵だって餌をたどればアメリカのとうもろこしだったりするわけで。
どこかで誰かが労働しているからこそ今日も食事を得ることができる。
そのための対価を得るために僕も労働している。

もちろん、仮に輸入が途絶えたり遠方からの流通が途絶えたりしたとしても、生活のレベルさえ問わなければ身の回りで採れるものだけで慎ましく暮らしていくことは不可能ではないだろう。
それでも、誰か他人の手を借りずに満足な食事を得ることはできないだろう。
いや、ひょっとしたらそれもなんとかなるのかもしれない。
だけど、火がなくっちゃ調理ができない。
靴がなくっちゃ歩けもしない。
服や家がなくっちゃ凍えてしまう。
拾ったどんぐりですら、熊のようにそのままかじることはできず何らかの道具がいるわけで、それほどまでに人間という生き物は道具を利用することが必要なのだ。

結局、人間の暮らしは、集団であることと、道具を使うことで成り立っている。

それに比べて。
あのカラスたちの潔さったら!

もちろん世界中に野生動物はたくさんいるし、ネズミやスズメやトカゲや昆虫や魚を含めて野生の生き物は身近に存在するけれど、それなりの大きさでそれなりの知性を持った生き物として、カラスは都会生活の中で一番近くで観察できる野生なのだと思う。

カラス。
かっこいいな。

人を襲うとか、ゴミを散らかすとか、なんとなく不吉だという理由でカラスを嫌う人も多いだろうけど。

カラスはめったなことで人を襲うことはありません。
カラスの体で人間を襲うなんて、人間が象を襲うようなもの。普通は勝ち目がない。野生動物は勝ち目のないことはしない。
襲うことがあるとすれば、子育て中の巣を守るとか、よっぽどカラスの興味を惹きそうな食べ物を無防備に持ち歩いているかくらい。
ゴミ問題だって、そこにエサがあるから食べているに過ぎない。
カラスから見たらゴミの山は、森の中で行き倒れた鹿の死骸が転がっているのと同じなわけで、そりゃ漁るでしょうよ。
不吉なのは、例えばカラスが死骸を食べたりするからだろうけど、戦闘能力としては決して高くないカラスは、生き延びる術として鷹のように狩りをするのではなくなんでも食べられる雑食力を身につけてきたわけだから仕方ないこと。

僕がカラスをいいな、と思うのは、そういう端っこい雑食さやクレバーな立ち回りのよさ。
それから、基本的に個人主義なところ。
集団でつるみはするけど、集団じゃなきゃ生きられないってこともなく、徒党を組んで集団のヒエラルキーだけで動くわけじゃないところ。
なかなかロックだと思うのですが。


さて、カラスの歌でも聴こう。

↑THE HIGH-LOWS↓のラスト・シングル“サンダーロード”のカップリング曲、
“カラスと俺がジャジャジャジャーン”。



ヒロトとマーシーの存在も、ある意味都会の野生と言えるかも知れないね。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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