FC2ブログ

Entries

音楽歳時記シーズン3「霜降」

10月23日、霜降。
霜降というのは、その名のとおり、霜が降り始める時期、という節季。
秋が深まっていく。

10月の平均気温って、実は4月よりも高いのですよね。
でも、どうしてだろう。
4月の18℃よりも10月の18℃のほうが冷たく感じてしまう。春の夕暮れよりも秋の夕暮れのほうが寂しく感じてしまう。
なんとなく下っていく、閉じていく、そういう感じがするからだろうか。
ただでさえ、また大きな災害があって気が滅入る。
どんどんと下り坂を転がり落ちている気分になってくる。

いやだねー。そんな風に捉えるのは。
むしろ落ち着いて過ごしやすい季節じゃないか。
ちょうどいい季節じゃないか。
日々平穏に暮らせて、それ以上に何の不満があるっていうんだ?
健康診断の数値だって悪くなかった。
悪いことなんて何にもない。

仕事終わりにはビールを一本、っていうのがついつい習慣になっているけれど、こんな日にビールを飲むと余計に気が滅入る。
むしろ、熱くて苦めの紅茶でも飲みたい感じ。
落ち着いて、ほっと一息。

ということで、音楽も紅茶が似合うような英国風の一枚にしよう。
スモール・フェイセズなんてどうだ?

20190829075640fb1.jpg
Ogden's Nut Gone Flake / The Small Faces

このアルバムは1968年発表のスモール・フェイセズの4枚目のアルバム。
前年に世界を席巻した『サージェント・ペパーズ』に倣ったサイケデリックなコンセプト・アルバムと評されているけれど、うーん、そうなのかなぁ。
サイケデリックというよりも僕はむしろ、良質な読後感の読書をしたような穏やかなトリップ感を感じるのです。

このアルバム、最初に聴いたときは全然ピンと来なかった。
そもそもコンセプトアルバムだとかサイケデリックだとかには全然興味がなくって、もっと直球ストレートなロックンロールが大好きだったから。スモール・フェイセズで言えば初期の“Sha-La-La-La-Lee”とか。
なんだかまとまりなくとっ散らかった感じしかしなかった。かっこいいロック・ナンバーを聴いたときの、うぉぉおおーかっちょいいー!みたいな感じ、いわゆるカタルシスを感じなかったのだ。
メンバー一丸となって「おぉー、やるぜー!」みたいな感じのないだらだらした演奏のように当時は感じたかな。
それがいつ頃から、こういう音が心地よく感じるようになったのだろうか。

演奏の温度、熱量そのものは結構高い。
リズム隊もブンブンうなっているし、イアン・マクレガンの弾くオルガンやピアノもかなりテンション高い。そしてスティーヴ・マリオットのヴォーカルもかなり暑苦しい。
にも関わらず、このアルバムから感じるのは、全然がんばらない穏やかなイメージがする。
穏やかといっても女の子のお散歩日記や爺さんの枯れた回想録のような穏やかさではなく、己の無力さや世界の理不尽さをきちっと受け入れたような肚の座った感じとでもいうか、周り続ける世界とはまるで別の場所で一定量の熱さを保ち続ける感じというか。
その表現手法というのは、ロック・ミュージシャン的というよりは作家的である印象がする。
良質な読後感の読書をしたような穏やかなトリップ感、というのもきっとそういうところから来るものなのだろう。



夏から秋へ、秋から冬へ。
この季節移動はやはり下りであり閉じていく感覚であることは拭えない。
春のときめきはなく、夏の開放感もない秋にあるのは、満ち足りた感じの穏やかさとでもいうか。
みんなで一緒に「やるぜーっ」て感じじゃなく、ひとりひとりそれぞれが自分なりに楽しめることを自分なりに楽しむのがいい。
そんな感じがいい。
秋は深まっていく。









スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/1514-1c562fe1

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

11 | 2019/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

Gallery

Monthly Archives