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腐敗と発酵

腐敗とは、有機物が微生物の作用によって変質する現象。
腐敗物には腐敗アミンなどが生成分解するため独特の臭気を放つ。
また、腐敗によって増殖した微生物が病原性のものであった場合には有毒物質を生じ、食中毒の原因ともなる。
(wikipediaより)

毎日じとじとムシムシですね。
梅雨明け宣言がいきなりでて突然の猛暑💦、心の準備ができてなくって参りました。
気温高い上に湿気が高い。
こういう高温多湿は雑菌が最も活発に活動する環境なのです。
いろんな衛生管理や流通上の温度管理が発達して昔よりものが腐りにくくなっている印象がありますが、この時期はさすがに危ない。
作りおきの鍋など半日放置したらアウトでした。

モノは腐る。
これはある意味正しい自然の姿。

ところで。
腐敗と発酵は、菌が作用してもともとあった物質の性質を変えていく、という点で、起きている現象としては同じことらしいですね。
人体に悪い影響を及ぼすものが腐敗、悪い影響を及ぼさないものが発酵。

仕事でヨーグルトや納豆の工場を見る機会があって、改めて発酵ってすごいな、って思ったのです。
ヨーグルトも納豆も、製品のパッケージになった段階ではまだ未完成なんですね。
ヨーグルトはしゃばしゃば、納豆は煮豆の状態で一旦パッケージされます。
パッケージの中に菌を入れて、定められた温度で寝かせることで菌が働いて、パッケージの中で製品になっていくのです。
一定時間一定の環境に置いて発酵がすすんでからあとは、冷蔵管理して発酵を止めるわけですが、菌は生きているので商品になったあとも発酵は続きます。
賞味期限を過ぎたヨーグルトが酸っぱくなりすぎたり、納豆がとろとろになってしまうのはそれ。

品質の安定した商品として出荷するためには、その日の気候条件や原料の状態にあわせて微妙に温度や時間を調整することが必要で、これを判断するのは職人の経験値。日本のモノづくりの奥深さ、なんですが、職人さんたちに言わせると「環境を整えて菌が活動していくお手伝いをしているだけ。がんばっているのは菌ですね。」ということになるわけで。

そうか。
環境を整える。
そういうことだな。

菌の作用をじっくりとただ待つ。
いろんなことが少しずつ変化して、発酵していく。
その環境をどう整えるのか。


人生も発酵過程と同じだな。
いろんな経験が少しずつ作用して変質していく。
元の材料、その置かれた温度、湿度、などの条件によって様々に変化する。
腐敗してしまうのか、人体に有効な発酵なのか、それは菌の種類と環境次第。


京都で悲惨な事件がありました。
事件の現場は、そう遠くないところで、いつも図書館へ行くのに通りかかるエリア。そんな場所であんな非道なことが起きたのが、逆にリアル感がなかったり、たどっていけば知り合いの知り合いくらいには今回犠牲になられた方の近親者がいらっしゃったりするのかな、とか思ったり。
容疑者が何を考えていたのかはわからない。
狂っていると言ってしまえばそれまでだけど、、、なんていうんだろうか、ふと、腐敗と発酵の紙一重さを思ったのです。
ある環境の中で、変質していく何か。
いつの間にか、本人をも汚染してしまった毒素。
それは、腐敗と発酵の差、すなわち紙一重の差だったのではないか、と。

もちろん容疑者を擁護するつもりなんてさらさらない、結果としての重大さは取り返しがつかないし、それは極刑をもって裁かれるべきだし、あまりにも理不尽に人生を寸断された被害者の無念やその近親者の悔しさや哀しみはどんなことをもっても償えるものではない。
ただ、、、本人的には発酵のつもりで熟成させようとしていたものが、実は社会にとっては有害な毒素だったということはあり得ないことではなくて、そこを否定してはいけないのではないのかと。
加害者を自分と全く別の世界の人間としてはいけないのではないか、と。
誰でも被害者にも加害者にもなり得る。
そのことを自覚した上で、自分の中の質的変化が有用な発酵であることを願いたいな、と。
そして、少しでも、菌が有効な活動ができる環境を整えることができるようであれますように、とそう願わずにはいられない。




蒸し暑い夏の夜に、腐敗と発酵が紙一重の音楽を。
トム・ウェイツ“Down Down Down”。







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コメント

[C3314]

Bach Bachさん、こんばんは。
貧富の格差、孤立・・・
今にはじまったことではなく、こういう凶行は昔からあった人間社会の闇の部分なのかもしれませんが。
はみだして孤立した人が救われる社会。
宗教も共産主義もそういうことを目指そうとして実現しえなかったわけですからね。。。

  • 2019-07-28 22:52
  • golden blue
  • URL
  • 編集

[C3313] 最近

よく読んでいるクラシック系のwebマガジンに、こんな記事が出ていました。
http://mercuredesarts.com/2019/07/14/critique-quest-ce-que-barbara-a-ressenti-en-allemagne-kondo/

京都の事件も、川崎での殺傷事件も、去年起きた新幹線の殺人事件も、なんだか似てる気がします。原因って、この記事に書かれてるところにも半分ある気がしてしまいます。
良い世の中になって欲しいですね。

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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