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音楽歳時記シーズン3「立春」

エルヴィス・プレスリーの歌は、季節を問わずいつだってかっこいい。
なにしろロックンロールの王様だ。
けど、それを承知でなんとなくだけど、僕はプレスリーの音楽に冬の匂いを感じてしまう。
遅めの新年会の帰り道に酔っぱらってハナウタで歌う“I want you,I need you,I love you”の印象が強いせいだろうか(笑)。
それは冗談にしても、当たらずとも遠からずなのかもしれない。

プレスリーの音楽は熱い。
けど、その熱さは、真夏の太陽のようにギンギラの熱さではなく、むしろコートのポケットに手をつっこんで冷たい風をしのぎながら歩く冬の夜に、懐に握りしめた懐炉のような温度感のような気がするのです。
声の震え方が、夏のそれじゃないし、秋のしみじみさでもない。
もっと芯から冷えきっていて、それ故に熱さを求める震え方。
“One Sided Love Affeir”の粋がって突っぱっているのにどこか甘いシャウトにある、ほんとはとっても不安で張り裂けそうなのに、精一杯の虚飾を身にまとって、カッコつけてみせる、そういう熱さ。
或いは、せつせつと弾き語りで歌われる“I Love You Because”の温もりを求めるようなせつなさにある、周りが冷えきっているからこそ、抱きしめたからだの温もりを求めてしまうような、そういう温かさ。

2019110223053781b.jpg
Elvis Presley / Elvis Presley

冬の匂い。
ただし、真冬じゃない。
どこかに明るく暖かい春の兆しをはらんでいる。
だから立春の音楽。
春を待ち望みながらも、冬の寒さにしがみついているエルヴィス。
そういう佇まいが、エルヴィスのかっこよさだと思う。








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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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