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音楽歳時記シーズン3「小雪」

11月22日が小雪。
初雪の便りが届き始める頃。
いつの間にか街路樹もすっかり赤や黄色に染まっている。
昼間はまだましとはいえ、朝晩はダウンが要るようになってきた。
また冬が来るんだなぁ。

冬はあんまり好きじゃない。
ただでさえ血圧が低い僕は、気温が下がると極端に血の巡りが悪くなる。
ましてこのところの忙しさがやっと一段落ついて、どっと疲れが出てきた今日この頃。
どこへも出かけずに家でゴロゴロしていたい。あったかいふとんにくるまってぬくぬくしていたい。
けど、実際そうも言ってはいられないから、しぶしぶふとんから抜け出してのろのろと起き上がるのだ。

風が冷たい、どんよりしたくもり空。
昨日はもうちょっとうすい水色の青空だったのに。

こんな日には、こんな気分を吹き飛ばしてくれるような音楽で気合いを入れるべきだ。
肝っ玉が太くて、肚の据わった音。

そんなわけでの冬の始まりの一枚は、ジョン・ハイアットさんの2008年のアルバムです。

20190609122821d9e.jpg
Same Old Man / John Hiatt

鉄工所のおっさん。
ジョン・ハイアットに僕はなんとなくそういうイメージを抱いている。
しかも二代目。父親は戦後の混乱の中で満州から引き揚げてきて、クズ鉄拾いから町外れに鉄工所を立ち上げ、息子は火花と鉄粉の舞う中でガキ大将として育った・・・そんな感じ(笑)。

若い頃の無茶のツケを背負ったかのようないがらっぽい声、ちょっと錆びた鉄っぽい感じのギター。
ジャケットの夕暮れの田舎道の如く、ひなびて黄昏た味わい。でも決して枯れてしまってはいない。
歳くって皺の数は増えても、ハイアットの骨太で不良っぽいガラっぱちさは健在だった。

かじかんであかぎれができた手で、歯を食いしばって鉄工所を経営してきたハイアットの親父のように(いや、あくまで想像上ですが)、厳しい時代を乗り越えてきた人間は強い。芯があってぶれない。
そんな背中を見て育った息子には、逆境を逆境とも思わないたくましさが受け継がれている。

“楽屋でブラウニー・マギーと一緒やったんや。
親爺さん、デュワーズのウイスキーをミルクで割って飲んどったわ。
ほんで、こんなこと言うとったな。
「あんなぁ、坊主。ほんまここだけの話、ブルースがお前さんを自由にしてくれる、なんてことは全然あらへんねやわ、わかるか?」
あぁ、昔のこと、思い出してしもうたわ。”
(Old Days / John Hiatt)



錆びた音のギターをがしゃがしゃかき鳴らして、いがらっぽい声で歌われるのはそんな歌。

ブルースが自由にしてくれることなんてない、という言葉を受け止めながら、それを軽々と笑ってみせる。
それが冬の時期を生きていく心構えなのかもしれない。

鰹や鰤が冬の冷たい海を泳ぐことで脂がのったり、寒の時期のほうれん草やねぎが冷たい空気にさらされて甘みがのるように、冬の冷たい風に当たることで蓄えられる栄養のようなものは確かにある。

この冬を乗りきれば、また少しだけたくましくなれる気がする。
まぁいろいろあるけど、ぶれずに行こう。





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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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