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韻が運ぶストーリー

前記事の蛇足で、「アース・ウィンド&ファイヤーの“September”は12月の歌」と書いたことをもう少し掘り下げてみる。
ここで言いたかったことは「この歌、みんな9月の歌だと思っているけど、ほんとは12月の歌なんだよ、知ってた?」ということではないからだ。

この歌の歌詞はこんな感じで始まる。

Do you remember the 21st night of September
Love was changing the minds of pretenders
While chasing the clouds away

詞だけを書き出すと、「9月21日の夜のこと、君は覚えているかい?」って感じですが、メロディー上はrememberとSeptemberとpretenderが対になって韻を踏んでいる。2コーラスめでringingとsinging。サビでもrememberとSeptemberが繰り返されますね。
この韻を踏むというのはマザーグースの昔からある常套手法。sunny dayとmonth of May、moonとJune、君がいなけりゃ夜は暗い/春の陽射しの中もとてもcry、、、っていうやつだ。

音楽というものは、メロディーとリズムとアンサンブルであって、歌詞というものは決してメッセージやストーリーを伝えるためだけのものではなく、メロディーやリズムとうまく呼応して心地よく響いているかどうかが大切。メッセージやストーリーだけを伝えたいのなら何も歌にする必要はなく、文章にしてしまえばいいのだから。
メロディーやリズムが歌詞のストーリーを決めていく。
わかりやすい例を挙げると、ポール・サイモンの“恋人と別れる50の方法”。

You just slip out the back, Jack
Make a new plan, Stan
You don't need to be coy, Roy
Just get yourself free
Hop on the bus,Gus
You don't need to discuss much
Just drop off the key, Lee
And get yourself free

自由になるための行動。背(バック)を向けるのはジャックでなきゃいけないし、新しいプランを練るのはスタンじゃなきゃいけない。寡黙になる必要がないのはロイだし、ガスはバスに乗るし、リーはキーを落とす。ガスがキーを落としたり、リーがバスに乗ることはありえないのだ。

或いはポリスの“Every Breath You Take”。

Every breath you take
And every move you make
Every bond you break
Every step you take
I'll be watching you

Every single day
And every word you say
Every game you play
Every night you stay
I'll be watching you

1コーラスめはk・ke、2コーラスめはay。
君の息づかいのすべて/君の行動のすべて/君が壊した絆/君のすべてのステップ
訳すとなんだか繋がらない感じも、韻を中心に見るとしっくりくる。

“September”に戻って、この歌が12月の歌である根拠は、二番の歌詞、Now December found the love that we shared in Septembr/Only blue talk and love/Remember the true love we share today、って部分だけど、おそらく作者には最初から12月の歌にするつもりはなかったのではないか。歌の軸になるremember、Septemberという言葉と韻を踏む言葉として引っ張り出されたのだろう。Novemberでもよかったけど、ノーと伸ばすよりもディッと撥音が入ったほうがリズムがよかったのではないかと。もちろん、一番で歌われた思い出が二番では「あ、今は12月なのか」と聴き手にイメージを喚起させる効果もある。
歌の歌詞というのはストーリーありきではなく、こうやってメロディーやリズムがストーリーを紡いでいくものなんでしょうね。

あぁ、理屈っぽい文章になってしまった。
そういう理屈は置いといて、音楽は音楽として楽しむのが本来の楽しみ方。
この記事そのものが蛇足です(*_*)。
そんなことより、“September”で踊りましょ♪



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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