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続・音楽歳時記 「白露」

とんでもなく強烈な台風が去ったかと思えば北海道の大きな地震。
被災された方の無事と安寧な暮らしが少しでも早く戻ることをお祈り申し上げます。
でも、どうしようもないよね。
災害に抗う手立てはないんだと思う。
いつだって自然は、人間の想定なんて、軽々と越えてくる。人間の想定を嘲笑うかのように、なんて比喩すら通用しない。自然は嘲笑ったりはしない。ただ、現象としてそこにあるだけだ。人間たちだけが勝手に、経験上からこの程度だろうと勝手に想定して、勝手に想定外だと騒いでいるだけなのだ。

・・・なんていうものの見方は、ニヒルに過ぎるだろうか。
だけど心配したってしかたがない、不安になったってどうしようもない。今は状況を受け入れて、耐えるしかない。
お天気は巡るし、季節も巡る。月は満ちては欠ける。
台風だって地震だって、来るときは来る。
人間の暮らしとは関係のないところで古代から未来までずっと繰り返すサイクル。
そういうのが来たら、できるだけ安全な場所を見つけて、辛い時期が過ぎていくのを待つしかないんだ。

節季は白露。
狂ったような酷暑が過ぎて(これもただの比喩で、自然は狂いはしないのだが)、幾ばくか過ごしやすくなったのに、なんだか大きな穴がぼこっと開いた、いや、えぐりとられたような気分が拭えない。
こないだ大阪で起きたことは、これからも起き得ることだ。今、北海道で起きていることは、いつかそのうち、僕らの街でも起こり得ることだ。
でも、びびったってしかたがない。
そういう世界で、生きていく、生き延びていかなくっちゃいけない。
悲壮になってもしかたがない。
どこ吹く風でやり過ごすんだ。なんてことはない。どうせ、生きてるだけで儲けもん。

秋の入り口にふさわしい音楽をと思ったんだけど、今はもうちょっとニヒルでクールな気分。でもどこかぶっ飛ばしたい気分。
そういうとき好んで聴くのは、例えばこんなレコード。

20180907233435508.jpg
Eventually / Paul Westerberg

ポール・ウェスターバーグさんは、元々リプレイスメンツというカレッジ・バンドにいた人。
アルバム・タイトルのEventuallyっていうのは、“結局”とか“やがて”とかいう意味。論理的な結論というよりは、“とどのつまりは”みたいなニュアンスだろうか。
ちょっとアコースティックでフォーキーな味わいがありつつ、どこかクールでニヒルでパンキッシュ。
決して情熱的でもポジティブでもない。だけど、やけっぱちでもない。そこはかとないアキラメ感はあるけれど、絶望的なテイストは希薄で、ざらざらとした気持ちを歌いつつもどこか淡々としてこざっぱりした感じもある。
いろいろあるけど受け止めてさ、なるようにしかならん世の中だけど、ぶれずにまっとうするしかないんちゃうの、あんたに強要はしないけど、俺はそんな感じやってくから・・・みたいなね。

大好きな一曲に、“Good Day”という歌がある。

Good day doesn`t have to be a Friday
Doesn`t need to be your birthday
The next one then you won`t survive
Sing along hold my life
A good day is any day that you`re alive
Yes a good day is any day that you`re alive

良い日は金曜日でなくったって構わない
誕生日でなくったって構わない
次の瞬間、きみは生き延びてはいないのかもしれない
暮らしにしがみつて、歌うんだ
きみが生きている日はいつだって良い日
きみが生きている日はいつだって良い日




そういうことだよね。
生き延びたいね。
必死にならずに、飄々と、笑みを浮かべてね。
季節は秋だ。
穏やかにいこう。楽しんでいこう。




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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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