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◇ものをつくること。「100文字レシピ」

ここしばらくの自分の記事を読み返してみて、本の記事が全くないことに気がついた。
まぁ、それもそのはず。ほとんど読んでいないからだ。
夏以降環境が変わってめまぐるしくばたばたとする中では現実だけで手一杯で、なかなか小説やなんかに手が出ない。
で、このところ通勤の電車で眺めているのは、この「100文字レシピ」という本。


100文字レシピ (新潮文庫)

100文字レシピ /川津 幸子

仕事上の必要もあって買ったのだが、これがなかなかいいのだ。
本の内容は、要は携帯サイトで画面をスクロールしなくても料理しながら見られるよう、アイデア料理や定番メニューのレシピを100文字以内で書きました、というもの。
日本には古くから俳句や短歌といった17文字や31文字で簡潔に感じたことを表現する文化はあるけれど、実際100文字ってのはとてつもなく少ない。このブログだとほぼ2行。
それを、こんなふうにやってしまう。
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<鶏の南蛮煮>
サラダ油大さじ1でねぎ2本のぶつ切りと赤唐辛子2本を炒め、5cm角に切った鶏もも肉2枚を入れて両面を香ばしく焼く。砂糖大さじ2、酒・しょうゆ各大さじ3、水3/4カップを加え、落としぶたをして15分煮る。
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どうでしょう?なんか簡単にできそうな気がしませんか?
僕なら「大匙」とか「落し蓋」とか漢字使って文字数ごまかしちゃうかなぁ、なんて。
この簡潔さと、たった100文字で「自分にも何かできるんじゃないだろうか感」を導き出させてくれるのはすごいと思う。大袈裟に言えば、これはひとつの詩ではないか、なんて思ったりした。

それから、レシピ以外に各料理について記されたちょっとしたコメントがまた素敵なのです。
この方は、本当に、ものを作り、食べるというシンプルな行為を愛しているんだなぁ、と。
それは、突き詰めれば、世界そのものを愛しているということなのだなぁ、なんて思わされるのです。

音楽や映画や文学や絵画といった芸術的なもののみならず、料理にしろ服飾にしろ建築にしろ、それから工芸やら農業やら…何にもないところから素材を集めて自分の手で何かを作り出す、ということはとても素敵なことだ。
その楽しさを知っている人と、与えられたものでしか生活できない人っていうのは、人生の豊かさが何百倍も違うんじゃないだろうか、って気がする。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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