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◇ポケットに物語を入れて

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ポケットに物語を入れて / 角田光代

文庫本には必ず巻末に解説が載っている。
この解説を読むのがけっこう好きだ。
場合によっては、つい解説から先に読んでしまうという、本読みとしては邪道極まりないことをすることもあるくらい。邪道だろうがなんだろうが、好きなものは好きなのだ。
その解説で書かれたことが、実際自分が読んだ感想ととても近いこともあれば、まるで違うこともあるのだけれど、たぶんそういうことはどっちでもよくって、誰かが表現したことに対してどう向き合ったか、ということを聞くのが好きなんだろうと思う。

角田光代さんは、世代が近いだけあって、なんとなく物の感じ方が近いような気がして勝手に親近感を抱いている作家のひとりで、この本は、角田さんが書いた解説や雑誌に掲載された書評みたいなものばっかりを集めたというちょっと掟破りな本だ。
解説や書評がブンガクとして成り立つのか?という素朴な疑問はすぐに吹き飛んでしまう。
読んだことのある本は実際そう多くはないのだけれど、どの書評からも、角田光代さんという作家独特の感じ方が浮かびあがり匂いたってくる。その本を読みたいというよりも、人はそうやって誰かが表現したことに対して共感したり、自分の思いを手繰り寄せたりするものなのね、と感じることが楽しい。
水面に石を投げ込んだときの広がる波紋のように、誰かの言葉が心の中で広がって別の波を呼び起こす。さざ波はやがて岸辺にたどり着いて、また別の波紋を起こす。そうやって心のさざ波が連鎖して行く中で、今まで気づいていなかった自分の中にある感情が呼び覚まされたりする。

誰かが感じた何かも、自分が感じた何かも、心の底に一度沈んで、混ざりあったり溶け込んだりしながら静かに堆積していく。
その地層みたいな堆積物の連なりの中からひょっこりと新しい言葉が生まれたりする。或いはそういうものが生まれなかったとしても、その地層を眺めるだけでもその人らしさがうかがえたりもする。
そういうのって、ちょっといいよね、って思ったりするのですよね。








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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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