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♪入院雑感

■腰という字は「にくづき」に「要」と書きますが、腰って、ほんと体の要なんだと実感した入院生活でした。
まさかぎっくり腰を悪化させて入院するとは思っていなかったですもん。

先週の土曜日の朝。医者へ行かなきゃと思って立ち上がろうとするんだけど、これが立ち上がれない。無理してふんばって、壁づたいに腕で支えながらなんとか立ち上がろうとしたものの途中で身動き取れなくなって。それ以上動かそうとすると激痛が走る。だんだん腕がしびれてくる。二進も三進もいかないとはまさにこの状態だと、頭のどこかで考えながら、腕はぶるぶる震えてくるわけで。あと数cm、この数cmが動かない。脂汗がにじりにじり。妻が隣でおろおろ。
自分の体って、自分が思っているよりもとても重たいんだということを実感しました。

そう考えると、羽生結弦くんとか内村航平くんとかはほんとものすごいことやってますよね。加速度をつけているとはいえ、自分の体を自分のエネルギーで浮かせた上に何度も何度もぐるぐる回って。
すごすぎます。

入院中の雑感をいくつか、メモ代わりに。

■人間が生きる上で「排泄」ということがいかに重要かということも、認識を新たにしたことのひとつ。
「排泄が自力でできるかどうか」は、人間の尊厳に関わるとてもたいせつなこと。
立ち上がれなくなった土曜日の前の夜、用を足そうとトイレにしゃがんだときも立てなくってね。パンツ下ろした状態で介助を頼むというのはとても情けないもので。これ以上無理できないな、って思ったもの。
入院してからの三日間は寝たきり。ここはいわゆる「しびん」でしのぎました。看護師さんは慣れているでしょうけど、これを手伝っていただくのは何とも辱しいもので。
あぁ、もし拷問とか受けたときに、気持ちでは「絶対死んでも口を割らない」と思っていても、尿意・便意にはきっと勝てないんだろうなぁ。縛られたまま敵の前でお漏らしでもした日にはきっと、泣いて許しを乞うて屈服してしまうだろうな、と。拷問を受けないといけないような予定は今のところないけれど(笑)。
大便は出なかった。金曜日の夜の経験が怖くて便秘になった。
月曜日の朝に、「今日出なければ、お手伝いしますから出してしまいましょうか。」と看護師さんは事も無げに言うのだけれど、そんな屈辱的なことはできる限り避けたい。月曜日の夜に自力で立ち上がることができるようになったのは、その辱しめから逃れたい一心だったのかもしれません。

■シモの話が続きますが。
人間の無意識下での体のコントロールっていうのは、ほんとうまくできていますよね。
トイレに自分で行けない環境のとき、ほとんど尿意をもよおさなかった。一日二回まで。出る小便はものすごく濃い。
ところが、火曜日以降自分で動けるようになると、とたんに尿意が増えるんだ。痛むし立ち上がりたくないもんだから我慢するんだけど、我慢しきれない。やむなく這う這うの体で立ち上がってトイレに行くと、明らかに薄い。おい、こないだまではもっと我慢できてたんじゃないの?どうなってんの?
おそらく月曜日までは、意識下でスクランブル体制が引かれていたんでしょうね。「今は無理だ。小便の余分な水分を他へ回せ!」と。それがスクランブル解除になると膀胱から拒否られる。
「緊急事態なら仕方ないっすけど、今はもう大丈夫っしょ。こっちも無理ばっかしてらんないんすよ。ただでさえ後始末ばっかやってる下処理部署なんで。」と我が膀胱庁長官。「いや、こっちもなかなかたいへんなんすけどね、そこをなんとか。」という四肢管轄庁からの申し出は、脳幹総督から却下を受ける。そーゆー状況。
おもしろいもんですよね。

■痛みがかなりましになってきて、一応動けるようになってから。
「どうですかー。お変わりありませんかー。」
「うーん、動かさなければ痛みはないんですが、腰を曲げるとすごく痛いんです。」
医者によると、もう炎症は退いて、外科的には治っていると。
「最初、すごく痛かったでしょう。その痛みを脳が覚えているから痛いんだ、というふうに最近は云われているんですね。はっきりしたメカニズムはまだ解明できていないんですが。」とその医者は言うのです。
「ここからは逆に、積極的に動かして、脳の記憶を書き換えさせないといけないんです。ゆっくりでいいから動かして、慣らしていってください。」と。
そういうものなんだろうなぁ。
「この動きは痛む。禁止。」と脳幹総督から命令が下ると、神経庁が脳幹総督に忖度するわけですね。「この動きをしたときは痛みを感じろ。総督からのお達しだ。」「ははっ。」、みたいな。
脳幹総督の意識を変えるためには「痛くない」実績を積み上げて命令を解除させないといけない。或いは我が脳の中のレジスタンスたちにクーデターを起こさせるか。
状況としては、あのアニメの有名なあのシーンと一緒ですね。
「クララ、あなたの足はもう治っているのよ。ねぇ、クララ。立って!」
「だめよ、ハイジ。私の足はもう治らないのよ。」
「クララのいくじなしっ!」
・・・
まぁ、そんなこんな。
ハイジに励まされて、僕は歩き出すことができました。

■病室で、若い看護師さんたちがきびきびと動き、笑顔で応対する姿はとても好感が持てるものでした。
若いからいいということではなく、まだ経験の浅い人たちが、ちゃんと心を込めて自分のできる対応しようとしている様子が心地よかったですね。
どこから来てるんだろ。なぜか方言まるだしで訛っている子が多く、ちょっとカーリング女子の「そだねージャパン」を思い出した次第(笑)。
入院患者はほとんどオーバー75の高齢者だったので、そのコントラストも含め、同世代がほとんどの日常では味わえない感じがおもしろかった。
ひとつだけ困ったのは、となりのベッドの爺さん。80前後くらいかなぁ、糖尿病を悪化させた挙げ句の体のあちこちの疲弊、という感じ。
この爺さんがね、ナースコールというものを理解しない。
何かあると「おーい。ちょっとー。」と叫ぶんですよね。
となりのベッドなので放っておくわけにも行かず代わりに呼んであげるのですが、それが連日。一回寝てるふりしてガン無視してやろうかと思ったのですが、ひょっと本当にナースコールに手が届かないとかの窮地だったりして、ここ無視すると将来同じような窮地に自分が陥ったときに誰も助けてくれなくって「あぁ、あのときのバチがあたったなぁ。」なんていう思いをするのも嫌なので結局呼んだんですが。
ちょっと痴呆も入ってるのかなぁ、急に「おかぁさーん、おーい。おーい。ちょっとー。」とか呼ぶのよね。看護師さんが「もう奥様は帰られましたよ。」というと「なんや。ここどこや。あんたはどちらさん?」みたいな。
あの世代ならきっと、若い頃から家のこととかはぜんぶ「おーい、ちょっとー。」で済ませてきたんやろうなぁ。
将来、ああいうふうにはなりたくないと思いました。自分のことが自分でできなくなったら、野生動物なら野垂れ死ぬのが当たり前なんだから。
ちなみにこのストレスは、「言葉が理解できる相手だと思うから腹が立つ」のであって、「言葉の通じない大きな犬が哭いているんだ」と思えば腹が立たなくなりました。
わんわんわわん。おぉ、犬が吠えている。なんかあったか。飼い主さーん。ってな感じ。

■いろいろありつつも、入院生活は概ね快適でした。
ウォークマンと本とノートと鉛筆くらいがあれば、暇で困ることはない。入院したのは、30才の頃に胃潰瘍で入院して以来だけど、今はスマホもあるしね。
基本的には畳一畳分くらいのスペースと少しの道具さえあれば大丈夫。多少の不便や物足りなさはあっても、今あるもので満足する。足りないことは工夫して楽しむ。そういうスタンスはたいせつかな、と。
この先あと30年近くは生きるとして、またこういう機会はきっとあるのだろうと思う。もっとひどい状況でこういう機会を迎えるかもしれない。それから、南海トラフ云々で避難所で過ごすようなことだって想定としてはあり得る。
そういうときのシミュレーションとしてもいい機会だったような気がします。



そんなわけで退院しての、のどかでウララカな休日。
リンダ・ルイスの透明な歌声と、アコギのがちゃがちゃが心地よい。

“Spring Song” Linda Lewis

20180317163621167.jpg
Lark / Linda Lewis


だらだらとまとまりなく長文書いてしまいました。
あー、月曜日までに残っている仕事を少しでも片付けなきゃ、なんだけど、あんまりそういう気分にならないなぁー。。。
ちょっと昼寝しよーっと。
あぁ、こんな感じで社会復帰できるんだろうか(笑)。



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コメント

[C3182]

ezeeさん、ご無沙汰ですー。
病気の入院だともっと食事制限があったり検査があったりとめんどくさいこともありますが、ぎっくり腰=所詮は「日にち薬」なので、医者からもほぼ放置。
基本出不精でごろごろするのは大好きなので、上げ膳据え膳での至れり尽くせりは悪くなかったです。めっちゃ活動的な人にとっては拷問かもしれませんが。

腰はねぇ、何するにも大事。
まさかぎっくり腰悪化させて入院するとは思ってなかったので、早め早めの養生がおすすめです。
  • 2018-03-20 08:23
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3181]

まいどです。大変でしたな、入院生活。。
私は生まれて入院したこと無いのですが、なかなか辛いものという想像でしたが、快適という面もあるんですね。
私もたまに腰痛でビビりますが、モーラスでなんとかしのいでます。なにはともあれ、お疲れ様でした!
  • 2018-03-20 00:04
  • ezee
  • URL
  • 編集

[C3180]

名馬さん、こんばんはー。
同世代でも、健康に関する話題が一番盛り上がるネタになりつつあります。そういう年頃なんでしょうねー。体の下り坂。

ヘルニアは足もしびれたりしてめっちゃ痛いんでしょうね。
母がヘルニアで手術をしたことがありましたが、動けなくなったときの激痛は、これ絶対ヘルニアや、、、と思ったもん。まずレントゲン撮って。
とりあえずは大ゴトでなくてよかったですが、たぶん普段の姿勢を改めるとか、体幹を鍛えるとか、そういう努力をしない限りいつかまたやっちゃうのかもしれません。
でも、そういう努力、きっと続かないだろうなぁ、、、って気がしてます(笑)。

  • 2018-03-17 23:03
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3179]

大変でしたね。
僕も以前ヘルニアで動けなくなったことがあります。
辛いですよね。

それと実は僕も先月入院してました。
といっても白内障の手術のためなのでたいしたことないんですけど。
お互い、これから身体がどんどん傷んでいくんでしょうけど、頑張って元気に楽しく生きていきたいですね。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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