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「入院ってしんどいですねー。」
「やることなくてめっちゃヒマでしょ?」

入院となると必ず言われる入院あるある的なこれらの言葉ですが、僕はあんまり当てはまらないのです。

元々環境順応性は高いのか、例えば「枕が変わると眠れない」というようなことがない。
その上、冬の間は3ヶ月ほど冬眠したいというくらいの基本出不精。ひまをつぶす方法なんていくらでもあるのだ。
従って入院はパラダイス(笑)。
仕事休んじゃってご迷惑をお掛けしてしまっている同僚たちには申し訳ないんだけど。

入院生活で退屈を感じないためには、少しコツがあります。
それは「ひとつひとつのことを丁寧にやること」。そのためには「時間を一切気にせずに」することと、「ながら」をやめること。
例えば歯磨き。一本一本を磨くくらいの感じで、ゆっくりゆっくり丁寧に磨いてみる。急ぐ必要なんてどこにもないから計ってないけど、たぶん20分くらいかけて。それだけでものすごく達成感を味わえる。
新聞なんかも普段ほとんど読み飛ばしているけれど、じっくり一文字ずつ読んでいくとこれはなかなかの情報量。4ページめくらいになるともう集中力が切れてしまうくらい。
「ながら」も、やめてみると普段どれだけ「ながら」でやっているかよくわかります。
音楽聴きながらスマホ、テレビ観ながら新聞、などなど。
「ながら」をやめてひとつのことに集中すると、味わいがまるで変わってくるのですね。
あー、この曲、こんなベースラインだったんだ、とか、こんなとこでサックス鳴ってたんだ、とか、普段聴いているようで聞こえていない音が聴こえてきたりする。テレビでも、アナウンサーの顔じっくり見て「あー、この人こんな大きな耳だったんだー。」とか発見したり、普段見ていないスタジオのセットの背景が気になったり、いろいろ発見があります。
こーゆーことしてると、時間なんてけっこうあっという間に過ぎてしまうのですよね。

この「丁寧」を維持するポイントは、集中とリラックス。人間の集中力はだいたい45分~60分までのようで(学校の授業時間の長さは理に適っている)、それ以上になってきてちょっと飽きてきたなと感じ始めたら止める。
文庫本を一時間読んだら一旦止めて、音楽に切り替えて一時間。テレビもだらだら観ずに番組が終わったら一旦消す(幸い有料だから躊躇なく消せる〉、で、また本の続きを一時間。ほーら、もう4時間たったでしょ(笑)。

消灯は早いけど、山小屋だと思えば快適だ。
ご飯は決しておいしいとはいえないけど、最初からこんなもんだと思えばこんなもんだ。
となりのベッドの爺さんの独り言がたまにうるさいけど、まぁ大きな犬だというくらいに思っておけばだんだん気にならなくなる。
今ある環境を受け入れて、ココロに波を立てない。
慣れるとなかなかに快適ですよ。
もちろんこれが期間限定の非日常だからこそ、楽しめるんだけど。
期間限定の非日常という点では、お金持ちがバカンスに出かけるリゾート・ホテルだってそう変わらないんじゃないかしら。行ったことないからよくわからないけど(笑)。


心を穏やかに落ち着けたいとき、あるいはそういう丁寧な気分モードにしたいときに、この本を読むのがお気に入り。
池澤夏樹さんのブレイク作「スティル・ライフ」。

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池澤夏樹 「スティル・ライフ」

この物語の冒頭部分、というか物語に入る前のイントロダクションの部分が、暗誦したくなるくらい好きで。
全文引用してみます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。
世界はきみを入れる容器ではない。
世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。
きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。
世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。

でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、ひとつの世界がある。
きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。
きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。
大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
たとえば、星を見るとかして。

二つの世界の呼応と調和がうまくいっていると、毎日を過ごすのはずっと楽になる。
心の力をよけいなことに使う必要がなくなる。
水の味がわかり、人を怒らせることが少なくなる。
星を正しく見るのはむつかしいが、上手になればそれだけの効果があがるだろう。
星ではなく、せせらぎや、セミ時雨でもいいのだけれども。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こういう考え方、こういう心の在り方。
普段忘れがちになってしなっているんだけど、こうやって普段のあくせくから離れてクールダウンしてみると、より心に響く。
二つの世界の呼応と調和。
50+1才としては、こういう感じでこの先行きたいよねぇ、って、入院という機会を得て改めて思い出すことができました。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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