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♪ふとんとブルース

今年はほんとよく冷えますね。
大阪や京都南部では幸い雪が積もることもなく、ふだんの暮らしに支障はないけれど、寒さはこの数年で一番。
そんな中でなんとか風邪もひかずに過ごせているのは、あったかいおふとんのおかげです。
年明けすぐにね、ちょっと体調崩しかけたときがあって。朝目が覚めると体が冷えきっていて。どうも安眠できていないんじゃないか、と。
エアコンは喉が乾燥するし、電気毛布みたいなのも局部的に熱くなりすぎて好きじゃないのですよね。例年の冬はそれで何ら問題ないんだけど、今年はさすがに。
そこで買ってきたのが、いわゆる「かいまき毛布」というモノ。袖を通して着るタイプの毛布ですね。首元あたりにはファーもついていて、これがとってもあったかい。これを使うようになってから、すっかり安眠できるようになって、体調も万全。多少のウィルスなら跳ね返してるんじゃないかと思えるほどで、心なしか肩こりもましになったような。

この「かいまき毛布」、昔は「夜着」と呼ばれる貴族や上級武士しか使えない高級品だったようで、実は「掛けふとん」よりも早くから使われていたそうです。
ちょっと興味がわいていろいろ調べてみると、江戸時代に入るまで「ふとん」というものはなくて、それまで農民は藁の中で、庶民は畳の上にゴザで眠るのが普通のことだったそうです。殿様や貴族でさえも、このあったかいおふとんで眠る心地よさは知らなかったのですね。当然今よりも家屋内は寒かったでしょうから、冬とかめちゃくちゃ寒かったことでしょう。当時の人からしたら、羽毛ふとんなんて神グッズでしょうね。
「夜着」が発明されたのが室町時代後期(1500年代中期)、江戸時代元禄年間(1600年代後半)になってようやく「綿」の入ったふとんが登場したのですが、当初「綿ふとん」が使用されたのは遊郭で、ふとんは一枚30両、今の金額だと5~600万円もする超高級品だったのだそうです。
なぜ高級品だったか?元々暖かい土地の作物である綿花は当時の技術では日本国内ではほとんど栽培できないものだったから。鎖国の時代だから輸入もままならず、綿はとても希少だったのですね。手を出せない庶民の間ではこれを真似た「和紙製」のふとんが一般的になっていったそうです。
庶民がふとんで眠るようになったのは明治の中頃(1890年代)まで下る。ふとんで眠る文化はたかだか120~130年ほどしかないのですね。

なぜ、超高級品だった綿が庶民にも手に入れることができるようになったのか。
その答えは「産業革命」と「奴隷制度」です。
18世紀後半の1764年にイギリスのジェームズ・ハーグリーブスが複数の糸を紡ぐジェニー紡績機を発明。1769年にはリチャード・アークライトらがより強い糸を作ることができる水力式の精紡機を、1779年にはサミュエル・クロンプトンが大量生産に向くミュール紡績機を開発。綿花から糸を紡ぐ効率が一気にアップしたのと並行して、1785年にエドモンド・カートライトが蒸気機関を動力とした動力織機を発明して織物の生産力も向上。原綿の供給面でも1793年にはアメリカのイーライ・ホイットニーが綿繰り機を発明したことで梳毛が大幅に改良され、大量の原綿が供給されることとなった。
そしてその綿の原料である綿花栽培を支えたのが、アメリカ南部。サトウキビやタバコと並ぶ大プランテーションの労働力としてアフリカから奴隷が売買されてアメリカへ連れてこられたわけですね。
アメリカで栽培された綿花が、イギリスで綿の製品になり、その製品は植民地へ売られた。製品を手に入れる対価としてアフリカ人は奴隷を売った、そういう三角貿易のスパイラルで綿産業は飛躍的に発達していった、ということなのです。
その結果、東洋の国にも安価な綿製品が流れ込んだ。日本人はそれをふとんにした。

厳しい綿摘み労働の中で歌われたハーラーソングが原型となって、やがて仕事の憂さを晴らす風刺歌がジューク・ジョイントで歌われ、ブルースが生まれる。1930年代になり、畑労働の機械化や化学繊維の台頭におされてたくさんの労働者が大都会へ流出してシカゴ・ブルースが生まれ、そのシカゴ・ブルースに感動したミックやキースがバンドを始めると、歴史と現代が一気に繋がっていくわけで。

ふとんの話がブルースに繋がっていくとは、思いもしなかったけど。
人の暮らしと歴史、奥が深いです。



ライトニン・ホプキンスの“Cotton Field Blues”を。

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コメント

[C3171]

波野井さん、毎度どーも。
ふと思いついていろいろ調べてみると、なかなか興味深かったです。ふとんとブルースの関係。

かいまき毛布、けっこうかわいいです(笑)。
おすすめですよー。
  • 2018-02-11 18:11
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3170]

どうも~!(^^)
かい巻き毛布のgoldenblueさんを
想像してしまいました。
かわいい(>v<)♪笑

かい巻き毛布からのライトニン!!
見事な展開。
ギャップ萌えしちゃいます(^^)。

でも、ブルースとコットンは切っても切れない
ですものね(^^)!

今回の記事も楽しませていただきました(^^)!
  • 2018-02-11 10:38
  • 波野井露楠
  • URL
  • 編集

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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