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♪レトロニム

言葉っておもしろい、という話の続き。

言葉は時代にあわせて変化していくものなんだけど、“現在呼ばれている呼ばれ方が、実は元々はそう呼ばれていなかった”ということがけっこうある。
わかりやすい例、例えば「ガラケー」という呼び方。
僕がスマホに変える前にあの形状のものを使っていたとき、それは「ケータイ」と呼ばれていたのだ。当時、携帯電話といえばあれだった。スマートフォンが普及し出してから、スマホとの区別をするためにガラケーと呼ばれ始めたのだ。
こういう言葉のことを“レトロニム”と言うらしい。
「固定電話」という言い方もそう。携帯電話が普及する前、電話と言えば家にあるあれのことだった。わざわざ固定なんてつける必要はなかった。
ガラケーと同じように最近のIT化で生まれた言葉として「紙媒体」とかもそうですね。

ちょっと調べると、まぁたくさんあります。
「天然芝」は人工芝のレトロニム。「白熱電球」は蛍光灯のレトロニム。「プロペラ機」はジェット機のレトロニム。「アコースティックギター」もエレキギターのレトロニム。エレキが発明される前、ギターはアコースティックが当たり前だった。
「日本酒」「和食」という言い方だって、洋酒や洋食が入ってきてから使われだした言葉。明治に入るまで酒といえば日本酒だったのだ。

おもしろいな、と思ったのは後から出たほうが元祖の言葉を乗っ取ってしまうケース。
例えば「サイレント映画」。映画というものができたころは無音が普通で、トーキー映画が誕生したあとに区別され、それが主流となったときに後出のトーキーという部分が取れて「映画=音声あり」となり元祖のほうに注釈が残る形に変わってしまったのですね。
「白黒テレビ」と「カラーテレビ」の関係も同じですね。今時誰も「カラーテレビ」なんて言わない。カラーが当たり前なんだから。
「コーヒー」と「レギュラーコーヒー」、「チョコレート」と「ホットチョコレート」の関係もそう。コーヒーは元々豆から挽くのが当たり前だったし、チョコレートは元々お菓子ではなく温かい飲み物だったのだそうだ。
「パンダ」と「レッサーパンダ」もそうで、最初パンダと呼ばれていたのは今でいうレッサーパンダの方だったとか。後から発見されたほうは「ジャイアントパンダ」と名付けられたが、ジャイアントパンダが超メジャーになった結果、今では「パンダ=白黒の」になってしまったのだ。なんか不憫だぞ、レッサーパンダ。
あぁ、そういえば、と納得したのは「ライヴ」という言葉。これもレトロニム。
20世紀に入ってレコードが発明されるまでは、そもそも音楽は生で演奏されるものだったんですよね。レコードが普及して、ラジオで録音が流れるようになって、それと区別するために「生演奏」「ライヴ演奏」という言葉が生まれたわけですね。

ピーター・グリーン時代のフリートウッドマックとか、ピーター・ゲイブリエル時代のジェネシス、シド・バレット在籍時のピンクフロイド、二人組の頃のオフコース、なんていうのも一種のレトロニムですよね(笑)。

ニール・ヤングとスティーブン・スティルスがいたバッファロー・スプリングフィールド 、ニック・ロウがいたブリンズリー・シュウォーツ、山下達郎と大貫妙子のいたシュガーベイブ、ヒューイ・ルイスがいたクローヴァー、ポール・ヤングのQティップス、ビリー・アイドルのジェネレーションX。平成の日本ならハナレグミのヒットのあとで知ったSUPER BUTTER DOGとか、星野源のサケロックとか。
メンバーのその後のソロ活動で陽の目を浴びたバンドっていうのもいくつもあります。
活動当時は後にそういうふうになるとは誰も考えなかっただろうなぁ、と思うと、なんとなくレトロニム的。
ふと思い出したのは、Blue Angelというバンド。
シンディー・ローパーさんがブレイクしたときに、元々いたバンドとして再発されたLPをレンタル屋で借りたことがある。
50~60年代風のオールディーズっぽい感じがけっこう好きだった。

20180124235801793.jpg
Blue Angel / Blue Angel

I Had A Love

今普通に使っているものにも、やがてレトロニムになるものがたくさんあるんだろうなぁ。
「二次元テレビ」とか「手動運転式自動車」とか「手描き画家」とか「生ヴォーカリスト」とか(笑)。

と、そんなことを書いていたのは、まだブログというSNSがあった頃。元号はまだ平成だった・・・って。



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コメント

[C3165]

LA MOSCAさん、ご無沙汰です。
Blue Angel、何気にいいですよね。
僕も新しいモノは苦手なんですが、わりと便利さには簡単に負けます(笑)。
再スタートのブログもまた読みにいきますねー。
  • 2018-01-29 00:00
  • goldenblue
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[C3164]

このレコード、俺も持ってます。
たまーに聴きたくなるんだよねぇ。

で、俺は反レトロニム精神で生きてます。
未だにスマホじゃなくケータイだし(笑)
  • 2018-01-28 21:53
  • LA MOSCA
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[C3162]

波野井さん、こんばんはー。
なるほど、アイススケートもレトロニムですね。
レッサーパンダの話とかはわかりやすいので子どもたちにも受けるかもしれませんね。
  • 2018-01-27 20:57
  • goldenblue
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[C3161]

BACH BACHさん、こんばんはー。
一応音楽ブログなのでと付け足した音楽ネタに反応してくれてありがとー。
僕はけっこう、クリスティン・マクビー&スティーヴィー・ニックス時代も好きです。
レトロニムという言葉は、僕もこの記事を書くにあたって初めて知りました(笑)。
  • 2018-01-27 20:54
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3158]

ご無沙汰しちゃってました~(汗)。
今回も楽しい話題、ありがとうございます。
一応専門が国語なので(笑)、めちゃくちゃ興味深かったです!
うちには元群馬県民がいるのですが、
私が「アイススケート」と言う度に、
「なんでいちいちアイスってつけるの?」と
よく突っ込まれたものでした(^^;)。

それにしても、シンディ、かわいい(^^)♪7969
  • 2018-01-27 16:53
  • 波野井露楠
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[C3157] 僕的には

フリートウッドマックはピーター・グリーン時代こそ至高です(^^)。でも、レトロニムなんて言葉があるんですね。勉強になりました!
  • 2018-01-27 15:42
  • BACH BACH
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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