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♪Language Of Life

一服の清涼剤だ、という言い回しがある。
例えば「トレイシー・ソーンのオーガニックなヴォーカルは、ユーロビートに浮かれたバブリーなシーンの中で、一服の清涼剤だった。」というように。
そう書いて、ふと思う。
「清涼剤」って、なんだ?
少なくとも僕は、「清涼剤」という言葉を、さっきのような例えでしか使ったことがない。
サイダーみたいなもの?いや、あれは「清涼飲料水」であっても「清涼剤」ではないだろう。
ミントとか、そーゆーハーブっぽい類いのものか?いや、言葉のイメージからしたらもっと錠剤か粉末みたいなもののような気がする。昔、駄菓子屋で小さなコーラの瓶の形をしたプラスチック容器に白い粉が入っていて、水を入れるとソーダっぽい味がするお菓子があった。ああいうものがかつては一般的に「清涼剤」として売られていたのか?
うーん、わかんない、って僕は匙を投げる。
ん?「匙」???
僕らの世代だと、それはいわゆるスプーンやああいう形状で液体や粉末を掬う器具のことだとわかるのだけど、たぶん娘にはわからないだろうな。僕と妻の会話には蚊帳の外って時があるもんね。
ん?「蚊帳」?
どういうものかはわかるけど、使ったことはない。
気になってきた。いろいろ調べてみたくなる。僕はこういうところけっこう几帳面なんだ。
ん?これは「帳面」?
調べてみると、この言葉の語源は「几の帳面」ではなく「几帳の面」。「几帳」とはいわゆる間仕切りのための家具、パーテーションみたいなもの。その柱の角が丁寧に丸める加工を施されていたことから、隅々にまで気を回すような意味に転じたようだ。

言葉っておもしろいものですね。
元々の語源になった言葉は廃れたり使われなくなったり別の言葉に置き換わったりしていくのに、合成語や比喩表現や慣用句の中で元の言葉が生き残っていたりすることがときどきある。
やがて語源そのものは誰もわからなくなっても、そういう言葉だけはずっと残ったりして。
「さつまいも」や「越前そば」が古い地名だというのはわかるけど、これらの言葉は今は基本モノの名前の中でしか使われない。「いよかん」しかり「越乃寒梅」しかり「吉備団子」しかり。海外なら「シャム猫」や「ペルシャ絨毯」もそうだ。
「丑三つ時」みたいな昔の時間の区切り方が残っている言葉も多い。「おやつ」とか「四六時中」とか。「午前」「午後」だって12時が午の刻だったことによるものだもんね。
「図星」は弓矢の的の中心のこと。「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の八卦は占いに使う図表のひとつ。どちらの道具も今、一般的には使われない。
「管を巻く」は、紡績工場で絹糸をまきとる音がガタガタうるさかったことから来た言葉。「はめをはずす」は、馬の口にはめる馬銜(はみ)のこと。なんとなくわかるとはいえピンと来ない。
「おくびにも出さない」の「おくび」とはゲップのこと。「ほぞをかむ」のほぞは、おへそのこと。どちらの言葉も今は、この慣用句の中でしか使われない。


はて、なんでこんな話になったんだったっけ。
あ、「清涼剤」か。
そうだった。
トレイシー・ソーンの涼しげな声で頭を冷やそう。
こういうクールでオーガニックな音を、寒い冬の日にひっそり聴くのもいい。

201801230034032cd.jpg
Language of Life / Everything But The Girl
Driving


言葉っておもしろいね。
その時その時の人間の暮らしが、化石みたいに痕跡として残っていくものなんだな。
きっとここに挙げたものの何十倍とあるよ、そういう言葉の化石。
考え出すとキリがないくらい。
ん?「キリがない」の「キリ」ってなんだ?
あ、これは単に「区切り」の「切り」か。
まるで埒があかないな。
ん?「埒」って何だ・・・???



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コメント

[C3163]

波野井さん、ありがとーございます。
蚊帳の外、四六時中、図星、当たるも八卦当たらぬも八卦、おくびにも出さない、埒があかない、なんていうのは、慣用句そのものが使われなくなってくている感じも既にありますが、、、
意味を知るとまたより理解も深まって、ちゃんと使っていきたいと思いました。
  • 2018-01-27 21:03
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3159]

どーもー(^^)。

センスありすぎで
にんまりしっぱなしです(>v<)!

面白い(^^)!!!
  • 2018-01-27 19:05
  • 波野井露楠
  • URL
  • 編集

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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