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続・音楽歳時記「小雪」

11月21日は、小雪。
今年も残りもう1ヶ月と少し。日が暮れるのがものすごく早くなったね。5時も過ぎると一気に暗くなりはじめて。
なんとなくこの季節はせかされるというか、例えばウェイターがラスト・オーダーを取りに来て厨房ではフライヤーを洗いはじめる時間帯の、客もまばらになった居酒屋で呑んでいるような気分みたいな感じがしてしまう。
帰り支度もめんどくさい。あぁ、コート着てくるんだったな、なんて気分になりながら、さっさと帰ってくれないと片付けすすまねーし、みたいな気持ちを丸出しにした愛想のない「あーしたー。」なんて声を聴きながら居酒屋の扉を開けると、外はもはや冷たい風。
あぁ、ほっこりしたいね。缶コーヒーでも飲むか。タバコが吸いたいな、あれ、ライター忘れてきたっけ。
なんだかね、ちょっと虚しい。

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Pirates / Rickie Lee Jones

そんな気分じゃいけない。
秋の終わりを心穏やかに見送りたい。
そんな気分にはリッキー・リー嬢だ。

彼女の歌は、すごく大人っぽくてセクシーかと思えば少女みたいにチャーミングで、知的なようでとてもやんちゃで、クールなようでとてもホットで、ハスキーなのに透明感があって、スイーツのように甘くてコーヒーのようにほろ苦く、そのどれでもなくまたそのすべてでもあるような、そんな感じ。ひとつの歌の中にいろんな表情が見え隠れする。
なんとなく淋しげな声でもあるんだけど、でもふわんとあったかいんですよね。
その感じが、秋の終わりにとてもよく似合う。

一番好きなのはファースト・アルバムだけど、このセカンドもすごくいい。
ジャケットの恋人たちの写真の雰囲気そのままのモノクロームの映画のプロローグのように、アルバムは“We belong together”で静かにスタートする。呟きのようなリッキー・リーの声にやがて、スティーヴ・ガッドのドラムやレニー・カストロのパーカッションが加わって、ひとつのグルーヴが生まれてくる。「わたしたち、同じとこで生きてるのよ」っていう呟きがやがて歌に変わっていく。
続く“Living it up”はしっとりと穏やかに。ピアノにあわせて訥々と呟くように歌う“Skeltons”のあとは一転、チャック・レイニーのベースが大活躍するジャズ的にグルーヴィーな“Woody and Dutch on the slow train to Peking”でいつの間にか気分もすっかり盛り上がっている。
ちょっとファーストの“Chuck.E is in love”にも似た“Pirates”。ブラスがリードしていくのりのりの曲でありながらところどころですとんとリズムが変わってピアノ一本になったりする、そんな緩急自在な感じが素敵だなぁ。
後半、“A Lucky Guy”でしんみりして“Traces on the western slopes”でシリアスになって、夢を見るように現実と幻想の境目が溶けていくようなラストの“The Returns”でアルバムは静かに締めくくられる。
通してアルバムを聴き終えればいつの間にか、クサクサした気分はどこかへ消え去って、どこか浄化されたようなとても穏やかな気持ちになれるのです。
毎日少しずつ冬に近づいていく感じのこの時期は、どうもあんまり好きじゃない。なんとなく淋しくなってしまう。でも、今年はなぜか、ほかほかとあたたかい気持ちで迎えられそう。

北の地方では、雪が降り始めたとニュース・サイト。
さっさと帰ってお風呂に入ってあったまろう。
でもその前に、コンビニ寄ってライターを買わなきゃな。









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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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