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続・音楽歳時記「立冬」

11月7日が立冬。
名前のとおり、暦の上ではもう冬のはじまり。
酷暑だった夏の記憶も遠くに去って、冬が少しずつ近づいてくる季節。
気候が落ち着いてくると、なぜかジャズっぽい音が聴きたくなることが多くなる。なんとなくジャズが心地よく響く。
その心地よさというのは、ビートに鼓舞されたりメロディーに癒されたり歌をかみしめたり、というのとはちょっと違って、もっと大きな流れの中に身を委ねてしまうような心地よさというか、深く考えず、ひとつひとつに何かを感じとらず、頭も心もからっぽにしてただ音の流れにのっかって漂い流されていく感じというか、まぁそんな感じ。
そういう気分に適しているのは、ホーンが3本もあってピアノやベースも入り混じって丁々発止のインプロヴィゼーションを延々と繰り広げるようなジャズではなく、シングル・ホーンのサックス奏者が穏やかなトーンで淡々と歌を紡ぎ、リズム隊がそれにそっと寄り添うようなものが望ましい。

Dexter.jpg
Gettin' Around / Dextor Gordon

数多いるジャズのサックス奏者の中でも、個人的によくウマがあうのがデクスター・ゴードンさん。
いくつか名盤名演とされるレコードが残されている中で、ちょっと地味目の“Getting Around”というアルバムが好きで。
ひっそりしていてシンプルでありながらなんとなくユーモラスでもありジャケットを見てたまたま買ったアルバムなんだけど、たまたまなのかすごくしっくりきた。
発表は1966年。モダン・ジャズのピークは50年代後半から60年代前半で、この頃にはもうフリー・ジャズやファンクっぽいものが幅を効かせていたはずだから、おそらく発表当時ですら古くさいひなびた演奏だと捉えられていたはず。でも、そんなことはおかまいなしにいつもながらの古くさい歌を飄々と歌っている感じがとてもいい。
豪快でもなく、トリッキーでもなく、かといって淡すぎず、控えめすぎず、泣きに走りすぎず、ただただじっくりと、心の奥に溜め込んだなにかをひとつずつ言葉にしてみるような、ごまかしもハッタリもカッコつけもないちょっと不器用なくらいの音色。
時代がどんなに動いても、俺は俺の方法で俺の出来ることをやるだけさ、って感じ。
だからこそ、ひとつひとつの音が染みていく感じ。
ゆったりと懐の深いリズム隊は、ビリー・ヒギンスとボブ・クランショウ。楚々として控えめで寄り添うようなピアノはバリー・ハリス。そしてヴィブラフォーンのボビー・ハッチャーソンがとてもよく歌っていい味を添えている。そんないずれも地味ながら的確な演奏をする職人肌のミュージシャンたちを従えて、自分の歌を歌うゴードンさんが素敵。



うーん、しみじみするねぇ。
お酒もいいけど、熱ぅーいお茶でも淹れようか。





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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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