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続・音楽歳時記「小暑」

記録的豪雨。
住んでいるエリアにも避難勧告の連絡が届いた。
すぐそばにある疎水は舗道が埋まるまで水が溢れ、ゴウゴウと音を立てていた。
数十年に一度の異常な大雨っていうけど、それは過去のデータからの確率論でしかなくって、地球規模の気候変動が起きているとすれば、この規模の雨が降るのが次はまた数十年後ということにはならないだろう。

7月7日は小暑。
豪雨が去ったあとは、暑さが増してくるはずだ。
ついこの間までは寒さに震えていたのに、もう真夏?っていうか、もう2018年も半分既に過ぎてるんだ、と気づいて愕然とする。
大人になると月日が流れるのが早くなるって子どもの頃よく聞かされたけど、それはほんとうだった。
つい最近のことだと思っていたら10年以上も前のことだった、ってことも今やよくある話。
このレコードを初めて聴いたときの衝撃も最近のことのようによく覚えている。
暴風雨のように、或いは吐き出す場所のないマグマのように、エネルギーの塊をどかっと噴き出す泉谷しげる。そのテンションの高さ。なんだかよくはわからないけど、このアルバムは凄すぎる、、、と。

80
,80のバラッド / 泉谷しげる

音そのものとしてはそんなにハードなわけではない。つまりはラウドでもノイジーでもないし、リズムの手数が多いわけでも高速ビートをパンキッシュに叩くわけでもない。
にも関わらずとてもハードでへヴィーなのは、泉谷の存在そのものだ。
叩きつけるように歌う、歌うというよりは吠える、心の中にある苛立ちやうねりをそのまま噴き出させる歌。
醒めた熱気、狂おしいばかりに心の奥から噴き出してくるような熱さと、したたかなまでにクールで落ち着いた肚の座った感じ。
ヤスリのようにざらついた、しかしながらドスが効いただけではない深み、闇ではない深みを持った泉谷の声。
満たされない苛立ちをたくさん抱え込まざるを得ない都市の暮らしを、泉谷しげるはしなやかで確かな言葉と音で切り取ってみせる。
今立っている場所が実はとても不安定な場所で、いつも普通にあるものが実はとても希薄な存在で、今日のあたりまえは明日はあたりまえじゃないのかもしれない。そんな漠然とした不安が立ち上る暮らしの中で、勇気を持って立ち向かっていく力をくれる。

まだまだこれから暑くなる。地震だって豪雨だってこれから幾度もやってくるのだろう。
お金が腐るほどあって悠々自適の暮らしをしているのなら、避暑地へバカンスに行ったり、リゾートで優雅に過ごすこともできるのかもしれないけれど、しがない労働者はこの暑さから逃れることはできないのだ。まして天変地異的な事象に対しては、いくらお金があっても役には立たない。
だとすれば、そういう不安に立ち向かっていくためには心の強さが必要だ。
そして、その強さを維持する上で、音楽の力はとても役に立つ。
だから、熱い音楽でエネルギー充填が必要なのだ。
内側から煮えたぎるように湧いてくる熱い音が。








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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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