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音楽歳時記 「立秋」

朝からとても蒸し暑いのは台風の影響だろうか。
青い夏空と入道雲。
朝のうちから父のお墓へ行ってきた。
しばらくほったらかしにしていたせいで、夏草が生い茂っている。
幸い夕べ降った雨のお陰で土はやわらかく、草は抜きやすい。
この世への道を照らすというほおずきの入った仏花を供えて、お線香をあげて、蝋燭を灯して。

お墓は実家から車で30分もかかる山の中。
正直めんどくさい。自分がこの墓に入ることはイメージできないし、娘がここへ墓参りに来ることも想像できない。罰当たりを覚悟で言うと、そもそもあの世だこの世だということすら信じてはいない。
それでもお墓参りへ行くのは、まぁ故人への礼儀ということ、それから、母の思いの代行。
先月に脛椎の手術で退院したばかりの母から明け方に電話があったのは先週のこと。ベッドから起き上がるときに転んで動けない、と。救急車を呼んで緊急病院へ搬送、症状は右大腿骨脛部骨折。先週木曜日に手術を終えた。
「動かれへんなんて、年取るとこんなことになるんやなぁ。いっそ転んだまま電話せんかったらあっさり向こうへ行けてたかもしれん。」
「そんな、骨折くらいで死ぬかいな。」

そんな冗談を言っていたことすら、いつか思い出になって、そんなことを思い出しながらお墓に手を合わせる日が来るのだろう。
お墓参りというのは、結局のところ、その一連の儀式的なプロセスを経ることで故人を思い起こすためにあるのだろうな。
と、そんなことを思う程度には僕も大人になったようだ。

20190609122818db2.jpg
The Sound of Summer Running / Marc Johnson

パット・メセニー、ビル・フリゼールという個性的なふたりのギタリストの共演。
浮かんでくる情景は、少年時代の夏休み。夏休みの少年たち。
セミ捕り、カエル捕り、ザリガニ釣り、三角ベース、自転車レース、空き缶ボート競走。ひっかいて、転んで、虫に刺されて、すりむいて、泥んこになって、水びたしになって。
そんな少年時代の景色からいつの間にかずいぶん遠くへ来てしまったけれど。

抜けるような青い空。
暑いけど、静かな夏。
繊細なギターの音色に、穏やかな気持ちになる。

夏は少しずつ盛りを越していく。
明日は立秋。





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コメント

[C3078]

つき子さん、こんにちは。
まぁ、要は心のあり方次第ですよね。お墓、お墓参りという形式にこだわる必要はないかと思います。心の中で故人を思い起こすことが大事かと。自分のお墓もweb内のバーチャルでじゅうぶんだと思ってるんですが。

  • 2017-08-07 07:57
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3076]

亡くなった方のことを思い、手を合わせる。大事なことですよね。うちは写真とお香でいきますね。手を合わせるひととき、なかなか無いもの。どうも自分がゴーマンな気がするわ。
  • 2017-08-06 22:01
  • つき子
  • URL
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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