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♪わかってもらえるさ

5月の一週目は清志郎WEEK。
幾分湿気が増したものの、今日もいいお天気。
ハナウタで歌っていたのは、「わかってもらえるさ 」 。
清志郎自身が弾くとてもさわやかなイントロのギターや、明るい陽射しのようなボーカル。
転がるようなピアノとリズム。
とても素敵な歌だ。



わかってもらえるさ 

1976年。
まったく売れない暗黒時代の清志郎。事務所も移籍してレコード会社も替わってようやく発売されたアルバム『シングルマン』は、ろくなプロモーションもされないまま廃盤になり、相棒の破廉ケンチはノイローゼでギターが弾けなくなり…。
「もっと明るい曲をやらなきゃ売れっこないよな」と周囲に小馬鹿にされ、もがきながら、でも巷で売れている歌謡曲やニューミュージックみたいなものなんて自分にはできっこないし、そもそも自分らしさを失くしてしまったら歌を作って歌う意味なんてない・・・そんな葛藤の中でそれでもなんとか出来上がったこの曲は、「仲良くしようよ。」と握手を求めて右手を差し出すような歌。
きっと清志郎は「これは最高のナンバーだ!間違いなくヒットする!」と確信した違いない。
けれど、残念ながらそうはならなかった。
この次に清志郎のレコード『ステップ!』のシングルが発売されるのは、実に1979年の夏なのだ。

半分は若気の至りで「俺は俺の思うとおりにやるんだ!」なんて世間の常識もへったくれもなくやりたい放題やって、それが最初は面白がられてもてはやされて、でもやがて掌返されたように疎まれて、こんなはずじゃなかったのになんてだんだん自信を失くしかけて、それでも今まで否定してきたものをそう簡単に受け入れる勇気もなく、或いはそんなことをしてしまったら自分が自分じゃなくなるような気がして、それでもなんとかギリギリのところで譲歩してみようとしたのにもはや世間は知らん顔。
そういう経験が、自分にもあるから、この歌はとても身につまされる気がするのかもしれない。或いは、そういう自分につい重ねてしまいたくなるのだけれど、この歌を録音した頃の清志郎の心境を想像すると、なんだか泣き出しそうな気持ちになってしまうのだ。とてもさわやかな、悲しみなんてとても感じさせない曲なのに、泣き出しそうになってしまう。

それにしても、今思えば清志郎とチャボの新生RCサクセションていうのは、本当に奇跡にようなものだったのだなぁ。チャボとのコラボが実現しなければ、この「わかってもらえるさ」のシングルが清志郎の最後の作品になっていたのかも知れない。それこそゴッホみたいに、死んでから「実は凄い奴だった。時代が早すぎたんだ。」みたいな評価をされる、そんなことになっていたとしても決しておかしくはなかったのだ。
「わかってもらえて」本当によかったよなぁ。清志郎があそこであきらめていたら、僕らは清志郎の音楽に出会うことはなかったのだから。
だからといって、あきらめずに信じていればいつか、だとか、夢を失わないでいればきっと、なんてくだらないお説教をするつもりはない。どれだけ信じようと願おうと報われない時は報われないし、実現しない夢はいつまで待ったって実現しない。
ただ、そんな絶望的な環境の中でそれでも清志郎が歌う続けることが出来たのは、「わかってもらえる」「気の合う友達」がいたからこそなのじゃないのかなぁ、なんて思うのだ。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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