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♪December

The Fall 
The Fall/Norah Jones

どんより曇った空、冷たい雨。
見渡したらいつのまにか霧に囲まれていたみたいに冬が広がってきた休日に、ノラ・ジョーンズのニューアルバムを聴いていた。
彼女の独特の浮遊感のある声に、僕はいつもどこか遠くの世界へ連れて行かれてしまうような不思議な感覚に陥ってしまう。遠い、霞のかかった、ぼやけた風景の場所。暑くも寒くもなく外界と自分を隔てる接点が解けてしまうような場所。ぽっかりと雲の中に浮いているような場所。
そこでは息苦しさのような苦しみですら甘い香りがする。
しかし、今までにも増して彼女の声はけだるい。
それも、今までのけだるさとは少し違うけだるさで、例えばファーストアルバムでのけだるささえも楽しんでいるような輝かしさや、セカンドアルバムで聴かせてくれた、おてんばで頑固者で、それでいてちょっとおちゃめな彼女はすっかり影を潜めてしまった。
けだるさの後に聴こえてくるのはぼんやりとした不安や哀しみ。
決して弱気になったわけでも彼女の持つ艶が失われたわけでもない。
けれど、戸惑いや苦しみを隠さなくなった彼女の声。
何がそんなに彼女を苦しめているのだろう。
そんなことを思いながら聴き進めているうちに、ほろっと響いてきた“December”という歌。

“私を、私の知る限りで一番淋しい場所から連れて出して。”

とても淋しい呟き。


ファーストアルバムでの成功で求められた歌姫的なイメージを拒否して自分の足で歩き出した彼女は、その旅の途中で、今は荒野に立っているのかもしれない。
けれど、それは、自分の足で歩き出したからこそたどり着いた荒野なのだ、と思う。
少なくとも、お人形さんのように操られた結果、使い捨てられた果てに連れて行かれる荒野よりはずっといい。自分の心の中にある荒野に気づいてしまった以上、それはもう受け入れるしか術はないのだ。

今年の秋はいつになく早い。
秋だなぁ、なんていう感傷に浸るまもなく、空気はどんどん凍えていく。
もうすぐ12月。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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