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♪母親の退院

脛椎の手術でひと月半ほど入院していた母親が先週退院しました。
退院したのはめでたいことなんだけど、一人暮らしなのでこれからがまたたいへんっぽい。
歩けるのは歩けるんだけど、首にまだ固定具をつけているから足元がおぼつかない。実家の階段は狭くて暗くて急だからできるだけ昇り降りはほしくないのだけれど、洗濯物はやっぱり二階のベランダの物干しで干したいらしい。
弟は「転んで怪我したらあかんから。」ってやめさせようとするんだけど、まぁかれこれ50年以上もやっていることだからね、そうそう簡単に習慣を変えたくないんだろう、って気持ちもわからないではない。やめろって言うのは簡単だけどだからって毎日世話できるわけでもないし、たいへんでも自分でやりたいと思う気持ちがあるならきっとその方がいいはず。

日曜日も実家へ行って、あれをどこへ動かしてくれとかこれはいらないから屋根裏へ上げてくれとか母親の要望にひととおり応えて、買い物に連れていって、掃除機かけて、風呂掃除して。これからしばらく、少なくとも首の固定具がとれるまでは頻繁に実家へ行くことになりそうだ。
家にいることがどうも居心地が悪くて、高校を出てから一年せっせとバイトして金を貯めて家を出た、あれからもう30年以上だ。こんなふうに実家を行き来することになるとは当然想像すらしなかったな。

ちなみに手術そのものは、脛椎の軟骨がへたって神経を圧迫していたことによる痛みを、脛椎のうしろに器具を入れて固定させるというもの。
レントゲン画像を見せながら、
「ここに固定具を3つくらい取り付けたということなんやて。」と母。
「サイボーグ手術やな。」と茶化す兄。
「割れたり錆びたりせーへんのやろうな。」と弟。
「セラミックやから強いみたいやで。」と答える母に、
「最後に焼いたあと、骨といっしょにそれが出てくるんやな。」とシュールな冗談をいう自分の口調が、とても死んだ父親にそっくりだな、って思った。



一応音楽ブログなので何か母親に関する歌を、と思ったのですが、どうも「家族」を歌った歌は苦手でね、なんとなく。
昭和の頃はやたらと、苦労をした、あるいは苦労をかけた母の歌が、平成のいつ頃からかは、産んでくれてありがとう、とか、いつか母さんみたいに、とか、やたら感謝っぽい歌が多いような気がするんだけど、そーゆー歌を聴くと、なんとなくどこかむずがゆいような感じがしてしまうんですよね。
あるべき正しい価値観を押しつけられてるみたいな、なんとなーく痒いような居心地の悪い感じがしてきてしまうのです。僕の感じ方のほうがひねくれているのは間違いないんだろうけど。
別に家族が苦手だっていいじゃん。家族が揃って愛に満ちていて、支えあって生きていく、みたいなのが幸せの理想像じゃなくってもいいじゃん。逆にそういう価値観を目指した結果、思うようにいかなくて崩壊寸前の家族がたくさんあるんじゃない?だいたい、そんな価値観を押しつけられなくったって切りようのない縁なんだからさ。

母親が出てくる歌で好きなのは、シオンのこの歌かな。

街は今日も雨さ / SION

都会へ出てギリギリの生活をしている男が、公衆電話から実家に久しぶりに電話する。
母親は静かな声でたった一言、「生きてなさい。」って言うんだ。
その言葉にあるどうしようもなく複雑な感情こそがね、薄っぺらな言葉じゃとても言い表せない深い愛情なんじゃないかって。





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コメント

[C3070]

つき子さん、こんにちは。
家族っていうのはなんともめんどくさいですね。あんまり縛られずにゆるゆるでやっていくのがいいだろうと思っているのですが、まぁ節目節目ではそうもいかないこともあり。
男ばっかりの3人兄弟、僕はとくに家に寄りつかなかったほうなので、こういうときくらいは、という思いがある感じですかねー。
  • 2017-07-19 08:27
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3069]

家=諸悪の根源、くらいの勢いで長らく毛嫌いしてたので、いまだにしっくりこないところがあって、自分の家族も早々にバラバラ。娘に生きてたらいいよと言ってたのもついこのあいだのこと。でも、こんな状態で生きてることが苦しいんだと思ってただろうなぁ。
goldenblueさんご兄弟のお母様への言葉、愛情を感じます。仕事柄、介護が必要なご家族をいろいろ見聞きしますが、ほんといろいろ。男3人兄弟がお母様のことで集まるだけでもたいしたもんだわ。
  • 2017-07-18 22:53
  • つき子
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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