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♪東京散歩

東京へ行くときはできるだけ誰か東京在住の友人に会うようにしているのだけど、今回はバタバタしているうちに誰ともアポをとっている暇がなくって。
あー、そういや俺しょっちゅう東京行ってるけど、新宿近辺と上野近辺くらいしかうろうろしたことないなー、と思って、今回はいろいろ歩いてみた。

初日は山手線を新橋で降りて、汐留→築地→勝鬨橋で折り返して銀座→日比谷。日比谷公園ではアフリカ・フェスティバルっていうお祭りをやっていて、ゴスペルっぽいバンドが演っていた。そこでビール飲んですっかりいい気分になって、それから国会議事堂を横目に虎ノ門→東京タワーの見えるとこまで歩いてから六本木へ。
翌日は、地下鉄を半蔵門で降りて、千鳥ヶ淵→皇居の北の丸で日本武道館を見て靖国神社。カラスがいっぱいいて、しばらく観察してた。靖国神社のカラスって人に慣れてるのかな、全然逃げないんですね。
それから坂道を下って西神田→水道橋→お茶の水→秋葉原。ここまで来たんならってスカイツリーも見ておきたくなって、最後は隅田川を渡って両国まで。
いずれもニュースやなんかでしょっちゅう見聞きする地名ばっかりだけど、実際歩くと位置関係がよくわかる。これは、若い頃海外をうろうろしていたときによくやったんだよな。街に着いたらまず地図を手に入れてとにかく歩く。ブロックを越えるごとに街の表情が変わっていくのが楽しいのです。

DSC_0453_convert_20170629231147.jpg

写真は、お茶の水の聖橋から秋葉原方面の風景。
この景色はいつか見てみたいと思っていたんだよね。
さだまさしの“檸檬”っていう歌に出てくるんだ。

食べかけの檸檬/聖橋から放る/快速電車の赤い色がそれとすれ違う

投げられたレモンは川面に落ちて波紋を広げ、主人公の恋人はその波紋の広がりを数えたあと、ため息混じりにこう呟く。
「捨て去るときにはこうしてできるだけ遠くへ投げあげるものよ。」
橋の上から高く投げ上げられたイエローの固まりが回転しながら落ちていくところへ赤い快速電車が通りかかる。ゴゥゴゥと音を立てて。そんなビジュアルが鮮やかに浮かんでくるこの歌の景色。「檸檬」っていうのは、もちろん梶井基次郎が一枚かんでいる。青春のもやもやを時限爆弾に見立てて丸善に置かれた、あのレモンだ。
お茶の水近辺っていうのは文京区っていうだけあって学生街なんですね。
「まるでこの街は青春たちの乳母捨て山みたい。」「ほら、そこにもここにも、かつて使い捨てられた愛が落ちている。」という主人公の恋人もしくは元恋人の言葉が、街を歩いてみるととってもしっくり来る。

食べかけの夢を/聖橋から放る/各駅停車のレモン色がそれを嚙み砕く

夢の行き止まり。青春の、なんともへヴィーな局面。
放物線を描いて川面に落下してゆくレモンに込められた、ひとつの終わり。
なんてブンガク的なんだ。
さだまさしの原曲はさすがにもっちゃりしていて70年代フォーク感が古くさくも感じてしまうけれど、例えばシオンあたりがブルージーに演ったりするとすげえかっこいいだろうな。
なんてことを思いながら、聖橋の上で、行き交う電車をしばらくずっと眺めていた。
電車についてはまるで詳しくないしまぁ詳しくなろうとも思わないんだけど、電車が行き交う風景っていうのはいつまでも飽きずに見ていられるものですね。
みんなそれぞれに行き先があって、ほんの少し交差して、それぞれの場所へまた去っていく。
そのちょっとせつない感じ。
人の流れにも似て。

と、ここまで書いて、「流れていくもの」への憧れが自分にはあるのかも知れないと思った。
今回の散歩のコースはなんとなく東京らしいところ、って考えただけだったんだけど、隅田川の河口から始まって、江戸城のお堀周りから神田川を下るコースは全部水辺なんですね。川の流れ。
それから音楽も流れていくものだ。
やってきて、ひとしきりなにがしかの感情を残して、去っていく。
流れそのものになるよりも、流れを眺めているのが好き。
そう思って後ろを振り返ると、自分もやっぱり流れてた。


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コメント

[C3055]

deacon_blueさん、こんにちは。
できれば、橋の上からレモンを投げてみたかったです(笑)。

教師びんびんが放映されていた頃は、夜はバイトばっかりしててテレビ観てなかったんですよね。。。
  • 2017-07-01 16:51
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3054] 聖橋

☆ ちょうどうまく各駅停車の檸檬色が走ってますね。聖橋の写真はたいてい橋が主役なのですが,逆に「檸檬」の歌詩のように橋の上から撮る(見る)風景もまた一興があります。聖橋と言うと田原俊彦とか野村宏伸の顔が浮かんでくるのはバブルのことばかり最近ブログで書いているせいでしょうかねえ(自爆)。

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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