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♪See The Sky About The Rain

電車を降りて駅を出た瞬間、空がピカッと光った気がした。
え、カミナリ?
まだ六月になったばかりだというのに。
それとも錯覚?と思う間もなく、また、まるで切れかけた蛍光灯みたいに青白くほんの瞬間光る。西の空の雲が反射する。どどどどどど、と地鳴りのような低い響き。そう思ってすぐに、実は地鳴りなんて聞いたことはないけれど、と思う。
あなたの心ない言葉で私は傷ついた、とLineのメッセージ。
そんなつもりなんてなかったんだ。いつまでたっても理解しようとしないあなたに少し苛立っていたのは確かだけれど。
そして、砂漠に水を撒くように不毛だと感じているのも確かだった。と思って、やはり、砂漠で水なんて撒いたことはないけれど、と思う。
再びの稲光と雷鳴、そして巻き上げるような突風。まるで竜巻のようだ、と思う。
竜巻ならば見たことはある。以前住んでいたマンションは向かいに線路があって、その向こうには川、そしてその向こうにずーっと田んぼが広がっていたのだ、たぶん甲子園球場数個分。四階のベランダから、田んぼの上で渦を巻きながら移動していく竜巻を見たことがある。甲子園球場にも行ったことがある。タイガースがスワローズに破れた試合だった。逆転打を打たれた投手へ、スタンドから容赦のないヤジが浴びせられていた。

雨が降るのだろうか。
そう思って空を見上げる。
そういえばそんな歌があった。
ニール・ヤングだ。“See The Sky About The Rain”、ビーチにキャデラックだかビュイックだかが突き刺さったジャケットのアルバムのニ曲目。

雨が降るのだろうか。
そう思って空を見上げる。
破れた雲、雨。
機関車が列車を牽引している。
僕の頭の中で汽笛が鳴り響く。
だだっ広い平原につっ立っているいくつもの信号機。
線路を転がっていく。
雨の降る空を見てごらん。
幸せ行きの人もいれば、栄光行きの人もいる。
失うばかりの暮らしに行き着く人もいる。
おまえの物語を、一体誰が語れるというのだろう。

そんな歌だ。
どうしてニールは、雨空を見上げて、平原をひた走る機関車を思ったのかいまひとつよくわからないのだけど、僕にはこの歌の機関車とあの田んぼを横切る竜巻がなぜかダブってしまうのだ。

やがてボトボトと音を立てて雨粒が落ちてきだした。
まるで彼女の涙のようにボトボトと。
彼女の涙は見たことがある。泣かせたのは僕だ。
肩に、服に、カバンに、雨粒がボトボトと落ちてくる。痛いくらいに大粒の。
もっと降ればいい。いっそ、もっと激しく、もっと激しく。
その雨を浴びながら、僕はまるであの日の打ちのめされた敗戦投手のようにダッグアウトへ帰るのだ。


maxresdefault.jpg

“SeeThe Sky About The Rain” Neil Young



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[C3041]

波野井さん、ありがとーございます。
ブログも10年やるとなかなかネタ切れ気味で(*_*)、曲からインスピレーションを得てちょっとしたショート・ストーリーっぽくでも書いてみよーか、という感じでございます。

  • 2017-06-04 18:47
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3040]

なんか、すごく素敵な文章!
不謹慎だったらごめんなさい。

ニール・ヤングの曲もぴったりとはまります!
  • 2017-06-04 15:38
  • 波野井露楠
  • URL
  • 編集

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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