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音楽歳時記「啓蟄」

啓蟄というのは二十四節気の中ではわりと有名な方でしょうか。
元々の言葉は啓蟄啓戸。「蟄虫(すごもりむし)戸を啓(ひら)く」、つまり冬眠をしていた虫が穴から出てくる頃という意味ですね。
いきなりの20℃越えには虫たちも花たちもちょっとびっくりしちゃいそうだけど。え、もうそんな季節?慌てて起き出さなきゃ、って。

この時期に聴きたくなるのは、元気な音じゃない。
元気になれそうな音。
この時期の朝の光のように、まだ力強くはないけれど、透明感があって澄んだ音。
例えばアズテック・カメラ。

2018010521193347c.jpg
Highland,Hard Rain / Aztec Camera

はじけるような軽快なビート、軽やかに撥ねるギター、さわやかなメロディー。
だけどそれに乗る歌声はどこか心細く物憂げで、しかし荒んではいない。
所在なさ気で憂鬱ではあっても絶望ではない。希望の光はまだ弱く遠いかげろうのようにゆらゆらしてはいるけれど、木々の新芽のようにやわらかく瑞々しい。

Just close your eyes, again
Until these things get better
You're never far away
But we could send letters

もう一度、目を閉じてみて
もう少し世界がましになるまで
まだそんな遠くまで来たわけじゃないし
手紙を出すことだってできるしさ

(We Could Send Letters / Aztec Camera)

この曲の始まりの、とてもやわらかなギターの音がすごく好き。
音の粒のはっきりとしたアコギに、ブォーンと漂うように入ってくるベース。ピアノのか弱い音も交えながら少しずつ歌は熱を帯び、かきならされるアコギにコーラスが重なる。どんどんとメロディーが展開していきながら、サビでぶっきらぼうに言葉を吐き出した後の流れるようなギター・ソロが美しい。

寒い冬を越えて、命が再生される春。
まるで生まれたてのように不安も驚きも包み隠さずに歌うようなロディー・フレーム。
少しずつ、少しずつだけど、エネルギーが満たされていく。
慌てなくてもいい。少しずつでいい。
季節は確実に春に向かっていくんだから。






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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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