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音楽歳時記「雨水」

2月19日、雨水。雪が雨に変わる頃、という意味なんだそうだ。
薄く曇った空、薄い水色の晴れ間が見えているのにパラパラと細い雨が落ちてくる。

randynewman.jpg
Randy Newman / Randy Newman

用心はしていたのだけど、インフルエンザに罹ってしまって療養中。
そんな弱った感じにはランディ・ニューマン。
風邪引きのようなひび割れた声。火の消えかかった暖炉のように侘びしく、しかし確かに灯し火の暖かさが感じられるピアノ。冬の朝のもやのようなオーケストレーション。
真冬のような張りつめた厳しい冷たさではない、けれど暖かくなってきたというにはあまりにも心許ないぼんやりとした寒さに、ぼんやりとしたランディ・ニューマンの歌が染み入る。
小さな呟きやため息のようにほんの2分ほどで終わってしまう作品群が収められた、たった30分ほどのアルバムは、どこかこの世のものとは思えないようなドリーミーでポエティックな美しさを湛えていて、そして同時に、とてもヘヴィでダークな部分やクレイジーな部分を懐に忍ばせている。
そのクレイジーさは、真夜中の酔っぱらいのようではなく、むしろ冬の朝に公園で佇む老人のように、物悲しくてどうしようも救いようがなく、なおかつ少し滑稽ですらあり。

割れた窓、人通りのない廊下
青白い顔で死んだ月がグレイの空の上
人の優しさがあふれすぎて
今日はこれからきっと雨降り

(I think it's going to rain today / Randy Newman)

Human kindness is overflowing.
And I think it's going to rain today.

人の優しさがあふれすぎると、雨になる。
その微妙なニュアンス。
雪が雨に変わる、という意味にもとれなくもないな。
雪はやがて雨に変わる。
雨はやがてあがって、晴れ間がのぞきだす。
季節は少しずつ移ろっていく。
悲しい気持ちも楽しい気持ちもお天気のように移ろっていく。







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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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