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音楽歳時記「芒種」

芒種 (ぼうしゅ)は、「麦を納め稲を植う。芒ある穀類、稼種する時也」という言葉からの節季。
要は、種蒔きをする時節、ということですね。いわゆる田植えの季節。
田んぼには水が張られ、鏡のようにキラキラ光る。
その水鏡がずっとずっと広がっている。
はるか2000年3000年の昔から続く日本の初夏の風景。
米を主食とする民族にとって田植えというのはとても大事な行事で、失敗するとその一年、一族もろとも村もろとも食いっぱぐれてしまうことになるわけだから、成功のためには集団の構成員は好き勝手な行動は制限され組織されることになる。ルールが作られ、それを遵守することが尊ばれる。異端は排除される。日本的な生真面目さや集団のヒエラルキーは、そういった米作りにおける集団作業から発生しているのでしょうね。

まぁそういうことはともかく、田植え的生真面目さでなんとなく思い出したのがヒューイ・ルイス&ザ・ニュース。
きっちりと鍛練されたジャストでタイトなリズム、完璧なハーモニーのコーラス・ワーク。
そんなふうにプロフェッショナルな技術に裏打ちされているにも関わらず、どこかピュアな素朴なところが農耕民っぽい。
みんなで力をあわせてコツコツと努力を積み重ねた上で、最後はお天道様におまかせするようなフィーリング、っていうか。
メガ・ヒットになった『Sports』もポップでさわやかな『Picture This』も大好きなんだけど、それらに負けず劣らず大好きなのが、この『Four Chords & Several Years Ago』です。

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Four Chords & Saveral Years Ago / Huey Lewis & The News

ヒット曲を連発したクリサリスを離れてエレクトラからの94年のこのアルバムは、オールド・スタイルのロックンロールやR&Bの地味渋カヴァー集。
1曲めからジョー・ターナーの“Shake, Rattle And Roll”でご機嫌に始まって、サニー・ボーイ・ウィリアムソンの“Good Morning Little School Girl”やアラン・トゥーサンの“Mother In Low”、ファッツ・ドミノの“Blue Monday ”、ロイド・プライスの“Stagger Lee”といったブルースやニューオリンズR&Bの名作から、“Searching For My Love”や“Some Kind Of Wonderful”、“If You Gotta Make a Fool of Somebody”、“She Shot a Hole in My Soul”といった知る人ぞ知る名曲まで、泥臭くもポップでヒューイたちらしい陽気でのびのびとしたプレイが楽しい。
ポップ・ヒットを連発するよりもこうして好きな音楽をただ演りたいだけ、とでも主張するかのような、かつてのメガ・ヒット路線を拒否するかのような姿勢というか、このアルバムの演奏からは、オールド・スタイルのロックンロールやR&Bへのリスペクトと、自分たちの役割は大いなるルーツの継承だというような意志が感じられるのですよね。

ルーツへのリスペクト。ルーツの継承。
人々はそうやって、先人から受け継いだ文化を黙々と継承してきた。
その積み上げの先に今の僕たちの便利で快適な暮らしがある。
この歳になってようやく、そういうものの大切さがわかりかけてきた感じ、てっとこだろうか。






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deacon_blueさん、こんばんんは。
このアルバムなんかも中古店で250円とかで転がってるので、「救出」してやりたくなります(笑)。
村上春樹もヒューイ・ルイス好きだったかも、というのは、いい話ですね。
  • 2017-06-07 23:11
  • goldenblue
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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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