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♪CHESS STORY

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Chess Story Vol.1 From Blues to Doo Wop / Varios Artists
Chess Story Vol.2 from R&B to Soul / Various Artists

アトランティックと同じ時代に、もっと小規模ながら、黒人たちのための黒人音楽を録音していたのがシカゴのチェス・レーベル。
当時シカゴでは、マディー・ウォータースやウィリー・ディクソン、ジミー・ロジャースリトル・ウォルターらそうそうたるメンツが南部直送のどす黒くてへヴィーなブルースを日夜プレイしていた。
そしてハウリン・ウルフエルモア・ジェームスジョン・リー・フッカーサニーボーイ・ウィリアムソンロウエル・フルソン、それからなんといってもロックンロールのパイオニア、チャック・ベリーとジャングル・ビートの創始者ボ・ディドリー。畏れ多いほどのビッグ・ネームがバリバリに活動していた50年代のシカゴってのは、相当にヤバい街だったんだろうな。

たくさんの黒人たちが綿花畑で働いていたミシシッピ州やテネシー州。
1865年に奴隷制度こそなくなったものの、地主たちによる酷使と搾取の構造は変わらず、黒人たちはプランテーションで厳しい労働に従事していた。
1927年にはミシシッピ川の大洪水で大きな被害を受け、さらに化学繊維の発達で綿の需要は細っていった。一方で北部の大都市・シカゴやデトロイトでは第二次世界大戦での需要を背景に重工業が盛んになっていくが、移民受け入れを制限したこともあって、新しい労働力として南部から黒人たちが大挙して北部の都市へ移動していったのだ。このことが、シカゴで黒人音楽が大きな発達を遂げることと深い関わりがある。
メンフィスとシカゴの距離は850kmあるけれど、ハイウェイを走る夜行バスに乗れば一晩で着く距離。日本で例えれば、甲信越や東北と関東との関係、或いは九州や四国、北陸と関西の関係に近かったんだろうな。
故郷を捨てて遠く離れた大都市へ流れてきた黒人たち。近いとはいえ、たやすく行き来できる距離でもない。成功者のつてをたどって一攫千金を夢見てなけなしの金で大都会へやってきはしたものの、夢叶わず落ちぶれていくものが大半で、そんな吹き溜まりのような街で、故郷の訛りで歌われる南部のブルースは、黒人たちの心を癒したのだろう。
チェス・レーベルは、そんな黒人たちのために黒人たちの音楽を録音し続けたのだ。

チェスといえばブルース、なんだけど、実はドゥー・ワップやリズム&ブルースやロックンロールもたくさんリリースしていた、というのがよくわかるのがこのコンピレーション盤。
ドゥー・ワップならムーングロウズフラミンゴスブルージェイズリー・アンダーソン&ザ・ハーツ
“Rockrt88”のジャッキー・ブレントン&ヒズ・デルタ・キャッツ“ Searching For My Love”のボビー・ムーア&リズムエイシズ
それから、一番の稼ぎ頭だったのはシュガー・パイ・デサントエッタ・ジェームス
ボビー・チャールズの“See You Later Alligator”デイル・ホーキンスの“Susie Q”といった白人R&Bプレイヤーのも入ってる。
どのアーティストもどこか泥臭いというか、垢抜けない感じがして、そこが魅力的ですね。

京都も大阪も寒いけど、シカゴの冬はもっと凍えるように寒いんだろうな、なんて思いながら、このレコードをしんみりと聴く残業帰りの冬の夜。
ミシガンを越えてくる凍てつくような冬の風が吹き付けるシカゴの裏町で、暖かい南部の故郷を思いながら、一夜の酒盛りやギャンブルに身をやつしていく自分を想像しながら、ブルースな気分に浸ってみる。
だって、60年前のシカゴだろうが2017年の大阪だろうが、人が暮らしを営んでいる以上、ブルースの種なんていくらでもゴロゴロ転がっているんだからね。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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